〈時代の正体〉出会いが差別をなくす 朝鮮学校で見学ツアー

【時代の正体取材班=石橋 学】朝鮮学校の姿を知り、子どもたちと交流する「トブロ(ともに)ツアー」が10日、横浜市神奈川区の神奈川朝鮮中高級学校と横浜朝鮮初級学校で開かれた。朝鮮学校を巡っては、子どもたちへの県の補助金が打ち切られ、高校無償化制度から排除される状況が続く。トークイベントでは朝鮮学校と日本の高校生が出会いと交流の大切さを語り合った。  「理解されていないことを知れば傷つく」「本名を名乗るのにためらうこともある」 トークイベントで高級部2年の女子生徒(17)と男子生徒(17)が胸の内を明かすと、県立金沢総合高校1年の女子生徒(16)は「違う相手を知ろうとする気持ち、行動が大切」と力を込めた。

 小学生のころ、朝鮮学校でミニバスケの試合をした経験のある女子生徒は「何も知らないから偏見を持つようになる」と、同級生2人を運営ボランティアに誘ったのだという。

 ツアーは、拉致問題など政治的理由を持ち出され、理不尽な差別政策を受ける朝鮮学校に対する偏見を解こうと、教職員組合や市民団体でつくる実行委員会が主催した。

 参加者は朝鮮語を使った授業を見学し、部活として取り組む子どもたちの民族舞踊、民族楽器のチャンゴを体験するワークショップなどを楽しんだ。昼食時にはオモニ(母親)会手作りのスープが振る舞われた。

 同市旭区から小学生の息子2人と初めて訪れた上野恭二朗さん(48)は「身の回りで韓国や北朝鮮への差別的な言葉が吐かれるのを日常的に聞く。子どもたちにはそうなってほしくないから連れて来た」。校庭で朝鮮学校生と一緒になってサッカーボールを追う姿に目を細めた。

 来訪者に積極的に話し掛ける生徒の姿に「開かれた柔らかい空気を感じた」のは法政女子高校教員の及川圭子さん(33)。世間に流布する閉ざされた学校というイメージがいかに偏見に満ちたものであるかを知った。

 一方、パネル展示の前に立ち、補助金の再開を求める自分たちの思いを伝える生徒たちの懸命さに「差別を受けている側に頑張らせてしまっている。日本社会が変わっていかなければいけない問題だ」。子どもたちに痛みを強いている「自分たちの責任」との思いを強くした。

 県は2018年度も子どもたちへの予算計上を見送り、朝鮮学校を取り巻く状況が改善する兆しは見えない。実行委員会と打ち合わせを重ね、受け入れ準備にあたってきた中高級学校の金(キム)燦旭(チャヌク)校長は、それでも前を向く。

 「横浜で建学して72年、同胞だけでなく地域の理解にも支えられてきた。民族学校があることを地域の人たちに誇りに思ってもらえるよう、頑張っていきたい」 参加者は昨年の前回から50人ほど増えて約230人を数えた。

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