若者目線で伝える百人一首の雅 紹介本にフェリス大生協力

 フェリス女学院大文学部(横浜市泉区)の1年生が編集に協力した本「切り絵でつくる百人一首」(パピエ舎・著、谷知子教授監修)が発売された。若い世代にもっと親しみを持ってもらおうと、日本語日本文学科の16人が、百人一首に見る春夏秋冬や恋愛模様などをテーマにした6種類のコラムを執筆。雅(みやび)な世界と10代の感性が響き合う一冊になっている。

 同書は美しい絵柄の「光琳かるた」を切り絵で再現できることに加え、和歌の意味や歌人のプロフィル、鑑賞のポイントなどを1首ずつ解説。制作しながら百人一首の理解を深めることができる。若い女性向けの要素が濃いため、監修を依頼された同学科の谷教授が「基礎ゼミで指導する学生にコラムを書かせたい」と提案。学生は2、3人のグループに分かれて昨年夏から取り組んできた。

 コラムの内容には学生らしい視点が光る。

 「『百人一首』の恋愛事情」では、恋と夢を題材にした2首を取り上げ、顔を見ずに進む平安時代の恋愛は、会員制交流サイト(SNS)で交友が広がる現代と共通点があるとした。田中優衣さん(19)は「ツイッターで同じ趣味の人と知り合うことと、共通していると思った」。宝蔵寺日向子さん(19)は「現代との比較があれば興味を引くと思った。古典は堅いイメージがあるが、身近なコラムから読んでみてほしい」と話す。

 SNSの投票機能を活用し、「恋するイケメン」などのランキングを作ったグループもある。磯嶋さやさん(19)は「若い人が共感できる切り口を選んだ。1位の藤原義孝の和歌は、現代と異なる男性の熱い思いが新鮮」という。

 書くことで、学生が知識を深める機会にもなった。「歌枕」のコラムを担当した桃井栞さん(19)は「過去と現在を比べたり、いろいろ調べたりして盛り込みたいことが多くなり、文章を削るのが大変だった」と振り返る。

 学生は小論文などを書く機会はあるものの、コラムのような軟らかい文章は書き慣れておらず、試行錯誤しながら取り組んだ。谷教授は「易しい文章ほど書くことは難しいが、できないと言った学生は一人もいなかった。子どもから大人まで、手を使いながら親しんでほしい」と話す。

 1728円。問い合わせは、誠文堂新光社電話03(5800)5780。

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