76歳、「真の鉄人」へ 多摩川で40年、世界へ挑戦 川崎市高津区

ランニングコースの多摩川河川敷。「目指せ表彰台。『大言壮語』が私のモットー」と堀内さん

 水泳、自転車、長距離走(ラン)の総距離226Km、世界で最も過酷なレースの一つ「アイアンマン世界選手権」に今年10月、76歳で出場するトライアスリートがいる。宇奈根のカワサキスイミングクラブを拠点に練習する堀内匡さん(宮前区)がその人だ。

 アイアンマンレースは、トライアスロン競技の大会の一種。水泳3・8Km、自転車180Km、ラン42・195Kmで、総距離226Km(ハーフレースもあり)、17時間以内で完走を目指す。世界選手権は、各国で行われるアイアンマンレースで上位入賞を果たすなどして出場権が得られる。開催地のハワイ・コナはトライアスリートにとって聖地とも言われている。

 堀内さんは昨年11月、中国で開催されたハーフ距離の予選会75歳〜79歳部門で優勝。念願の世界選手権出場権を得た。過去に抽選枠で出場したことはあるが、予選を勝ち抜いた出場は初。

 「のんべんだらりでも続けていればチャンスはある。継続は力なり、かな」。さらりと語る。

始まりはダイエット

 トライアスロン歴40年。カワサキスイミングクラブを拠点に、多摩川河川敷で自転車やランニングを1日2時間、「ほぼ」毎日練習をしている。

 きっかけはダイエット。30代後半に娘と一緒に同クラブへ入会を決めた。IT技術者として働いていた当時、堀内さんの体型は、身長170cm、体重90kg。「このままでは健康が危ないってなってね。河川敷がすぐ近くだから水泳のほかに仲間と走ったり、自転車に乗り始めた」と笑う。

 3カ月で30kgの減量に成功するとさらに欲も出てきた。堀内さんは「素人ながら、アイアンマン世界選手権に憧れはずっとあった」という。初レースは47歳のとき。宮古島のトライアスロン大会で見事完走した。その後も不定期で大会へ出場。仕事優先の当時は、競技に気持ちも時間も全力で注げなかったが、辞めることはなかったという。 

がん乗り越え本気に

 70歳まで働き、趣味に費やす時間ができた頃、食道がんが見つかった。抗がん剤、放射線治療など3年間に及ぶ闘病を経て「本気で世界選手権を狙わないとそろそろ後がない」と感じた。

 2015年から年に2、3回、オーストラリアやタイで行われる予選会への出場を開始。「荒れた海で溺れかけたり、自転車で転倒して肩を脱臼したり」。そんな経験を経てようやくつかんだ世界選手権の切符だ。「1種目じゃ無理だけど、トライアスロンは3種目。均等にできれば、けっこう奇跡が起こるのよ」と冗談めかすが「続けてきたことは唯一の自慢」と胸を張る。

 226Kmの長距離レースを最後に完走したのは、抽選枠で出場した9年前の世界選手権。堀内さんは「今回の世界選手権で完走して初めて本当のアイアンマンになれると信じている」と今日も多摩川を走る。

昨年出場したタイの大会

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