教室に行こう 県立平塚商業高校(平塚市中里)

 「オペレーティング・リース資産とは何か」−社会人でも答えられないような難しい問いに、高校生が挑んでいる。

 2年生の「財務会計1」の授業では、生徒たちが「財務諸表の分析」というテーマに取り組んでいる。

 もっとも、企業や投資関係者が行うような財務状況や収益性などを読み取る分析ではない。実在する8社の財務諸表を与えられ、それぞれがどの企業の表か、選択肢をヒントに考えるというものである。中には英語の財務諸表も含まれている。生徒たちは5人ずつ班を作り、議論を重ねながら挑む。

 いざ始まってみると、教員の想定以上に活発な議論が繰り広げられた。「未収運賃の金額が大きい」「棚卸資産が1兆円以上ある」などの部分的な勘定科目をヒントに、企業名を推定していく。財務分析のプロが見れば本質的でないかもしれないが、自分たちの持っている知識と議論で企業を推定することで、この日の目的である「財務諸表を身近に感じる」ことができたようである。

 グループワークが行われる場合、生徒に司会などの役割が割り振られることもあるが、今回は特定の役割は定められず、フラットで自由な議論が交わされた。企業名を推定した後は、冒頭に掲げたテーマに取り組んでいく。端末機器の原価が端末機器販売の金額を上回るのはなぜか、ロイヤルティーとは…といったさまざまな課題を挙げ、意見を交わす。

 「なぜ売掛金がなくて、加盟店貸勘定というものがあるのか」と、担当教員に質問を繰り返す班も見られた。実はこれは、あるコンビニエンスストアチェーンの財務諸表なのだが、生徒はこういった疑問を通し、産業構造などを理解していく。解決できなかった課題は、次回までに班で調べてくる。

 今回の授業では生徒の発表まで行われる予定だったが、その予定は覆された。「研究開発費がこんなに莫大(ばくだい)だから、きっとこの企業だ」などと、授業の最後まで活発な議論が尽きなかったからだ。

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