披露宴会場、別れの場に 家族葬普及、花で明るく 横浜の施設と業者が新事業

 超高齢社会を迎え、冠婚葬祭のあり方が多様化する中、ホール施設「ワークピア横浜」(横浜市中区)と同市内の葬祭業者が手を結び、新事業を立ち上げた。市場の変化で披露宴会場としての稼働が減少している同施設をお別れ会や生前葬の会場として転用する試みだ。近年、親族だけで弔う家族葬などが普及。行き場のない思いを抱えた人に寄り添い、花を基調にした明るい雰囲気で、最期のひとときに彩りを添える。

 従来の葬儀のイメージを一新し、「花想(はなそう)」と名付けた。例えば、花に囲まれた祭壇を前に教え子が恩師の思い出をスピーチで語る。故人の趣味を反映させた飾り付けをし、友人たちが笑顔で送り出す。生前葬で自らプロデュースしてもいい。

 ワークピア横浜と共に事業を手掛けたのは同市中区の花卉(かき)・葬祭業「ステージ」。近年は、近親者だけで行う「家族葬」、通夜・告別式などを行わない「直葬」が増加し、最期の別れに立ち会えなかった知人をはじめ、遺族からも「職場の方を招いて葬儀を行えば良かった」といった相談を受けたことがきっかけだ。

 「多死時代」の要請もある。2018年度当初予算案に新たな市営斎場の検討費として2千万円を計上した横浜市では、民間を含む5カ所の火葬場でも「火葬待ち」が平均4日程度の状況とされ、「長い例だと10日待たされる例もある」と同社創立者の相原直樹さん。お別れ会を別日に催すことで、早朝など混雑しない時間帯に火葬を済ませることも可能になる。

 “旅立ち”だけでなく、“門出”の形も変化している。ウエディング市場を巡っては近隣の老舗ホテルのほか、専門施設やレストラン、海外のリゾートを選ぶカップルも一般化し、競争は激化している。

 ワークピア横浜によると、1990年代初頭に月45〜50件だった挙式利用が、四半世紀がたち年間2件程度まで減少。大野浩美統括部長は「ニーズが多様化する中で、今後は婚礼だけに力を入れていくわけにはいかない」と転換に踏み切った背景を明かす。

 もともと調理設備が整っている上、スタッフも冠婚葬祭のマナーを熟知している。石井清貴事務局長も「結婚式と葬儀は真逆だが、(花想は)悲しみを乗り越えて明るく送ろうという点で似ているのではないか。スムーズに移行できる」とうなずく。

 10人程度の集まりから250人以上まで、幅広い要望に応じる方針。今月7日には初のお別れ会が開かれ、本格的に始動した。

 相原さんは「しめやかに、楽しくというのがコンセプト。故人を中心に集まった方々に親交を深めてもらいたい」と話している。

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