雪の朝

 「…九州でも大雪のおそれがあります」と天気予報に脅かされながら就寝し、目が覚めておそるおそるカーテンを開ける。そんな朝がいつになく何日も続いている気がする2月の長崎▲そういえば、こんな曲がなかったか-と調べ物を思いついた。〈ねえ見てごらん雪だわ〉と〈まるで子どもみたいに目を輝かせる〉彼女。〈君は幸せな人だ〉と心の中で思う彼。〈またいつもの生活が始まるだけの朝なのに〉-おそらくは雪の少ない地域、小さな部屋で静かに暮らす恋人たち▲熱心なファンはすぐにお気づきだろう、さだまさしさんと吉田正美さんのフォークデュオ「グレープ」のデビュー曲「雪の朝」。1973年10月というから45年前の作品だ▲“鮮烈デビュー”とはいかなかったようだ。〈友人らがレコードを買い込んで知り合いに無理に買わせた…〉と、何だかほほ笑ましくも涙ぐましいエピソードが紹介されているのをネットで見つけた▲出世作となった「精霊流し」が発表されるのは半年後のこと。当時21歳だったさだ青年、「雪の朝」の頃、今日の息の長い音楽生活を想像できていたかどうか▲ところで、雪の日の〈いつもの生活〉は、さまざまな人々の“常ならぬ”努力で支えられている。そろそろ冬将軍には退場を願いたい。今朝はどうだろう。(智)

© 株式会社長崎新聞社