バレンタイン商戦60年

 10年ほど前、内村航平選手が好きというので評判になった商品がある。ココア風味のクランチをチョコレートで固めたその商品はこの時期、分かりやすい広告コピーで目を引く。〈一目で義理とわかるチョコ〉▲1個1個の袋にこのコピーが表示されていて、なるほど、一目で分かる。堂々と「義理」だと言い切れば、あげる側ももらう側も余計な気を遣わずに済みそうなのだが▲分かりやすく、手っ取り早く、という発想の裏側に「義理」の織りなす綾(あや)を感じなくもない。日頃のお付き合いを考えれば贈った方がいい気がする、でも、あれこれ頭を悩ませて選ぶのも手間だし-と女性の心理を察するのだが、実際はどうなのだろう▲東京のデパートに初めてバレンタインセールのコーナーが設けられてから今年で60年。そのときは板チョコ3枚とメッセージカード1枚が売れたきりだったというが、やがて定着し、義理チョコ文化も広まった▲高級チョコの会社が最近「義理チョコをやめよう」と宣言したかと思えば、県内のバレンタイン商戦の記事には「自分へのご褒美」に高額品を買う傾向がみられる―とある▲一目で義理と分かるもよし、義理をやめる手もあり、“自分チョコ”もまた一興。多様化が浮かび上がる、きょうは「バレンタイン商戦60年」の記念日。(徹)

© 株式会社長崎新聞社