《川越》「小村雪岱」展 穏やかで繊細な感性

「春告鳥」 昭和7(1932)年頃 絹本着色 個人蔵

 日本画から挿絵、本の装丁まで手掛け大正から昭和にかけて活躍した小村雪岱。細やかなタッチで描いた女性像や風景画などの作品で一世を風靡(ふうび)した日本画家の回顧展が、生まれ故郷の埼玉県川越市の市立美術館で生誕130年を記念して開催されている。

 魅力は余白を生かした画面構成と簡潔な線による無駄のない描写だ。「春告鳥」。シンプルな柄の着物姿で屈む若い女性。振り返る視線の先には、1羽のウグイスが飛ぶ。驚くでもなく優しい表情で見つめる。画面の上から芽吹き始めた柳の枝が垂れ、春の到来を告げる。柳の幹を描かないことで、空間が広がり余韻を残す。爽やかで繊細な詩情があふれる。

 雪岱の作品は独特の様式を持つ。細面でややつり上がった切れ長の目とすっと通った鼻筋、小さな唇の華奢(きゃしゃ)な女性像。余白を生かした画面構成と挿絵に見られる白黒の明快な配色。その絵のスタイルは「雪岱調」といわれ人気を集めた。

「お伝地獄」(『名作挿絵全集』挿絵原画) 昭和10(1935)年 紙、墨 埼玉県立近代美術館蔵

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