【今後の展望と課題】〈ボルト・ナットメーカー竹中製作所・竹中佐江子社長に聞く〉再生可能エネルギー関連、ボルト事業が好調 国内外で高品質コーティング製品PR

 特殊鋼製ボルト・ナットメーカーの竹中製作所(本社・東大阪市)は、ボルト事業や電子機器事業など国内での業容拡大だけでなく、アラブ首長国連邦(UAE)で表面処理事業を行っている。同社の国内外での事業戦略や研究開発動向および課題などについて竹中佐江子社長に聞いた。

――直近の業績および今期の目標を。

 「2017年9月期は売上高24億円、経常利益2億5千万円で前期比増収増益となった。経常利益は前年同期比約60%増。増収増益の要因は、昨年6、7月ごろから風力発電など再生可能エネルギー関連のボルト事業が好調に推移しているため。風力発電向けボルトなどは経産省からの認定が必要なため、通常のボルトより参入障壁がある」

 「足元もボルト事業は好調で本社工場は高稼働、今年はこの状態が続く見通し。また、電子機器事業も前期より上向きで推移している。今期は売上高27億円、経常利益3億4千万円を目指している。9~12月期は既定路線に乗っている。需要増に見合う生産体制が必要となる」

――生産面強化のための設備投資は。

 「風力など土木関連向けボルトの生産性向上のため、鍛造機を今年中に増強する。また、効率化と省力化のため、大学教授のアドバイスを受けながら、本社工場の表面処理ラインを改修する予定だ」

 「老朽化更新やラインなどの生産性向上を図りながら、製品の拡販に努める」

――フッ素樹脂コーティング『タケコート1000』と、カーボンナノチューブ配合のコーティング『ナノテクト』の販売状況は。

 「30年以上、販売・改良を行っている『タケコート1000』は国内外問わず知名度があり、拡販につながっている。特注の図面で受注生産が多い当社の製品はコーティングも一品一様。『ナノテクト』は、拡販のため用途開発に注力している」

――新商品など研究開発動向は。

 「『ナノテクト』は常温でも塗装可能な技術を研究開発中だ。現在、潜水艇向けやプラント向けに納品しているが、大学教授を顧問に迎えて医療など新分野への用途開発を目指している最中。用途拡大のためには、ユーザーが求める製品を開発し、製品特性をご理解いただくべく充分説明することが重要だ」

――線材価格は昨年から高騰しています。

 「当社製ボルト・ナットなどの母材は、神戸製鋼所と愛知製鋼。昨年から線材価格が高騰しているだけでなく、輸送費など副資材も上昇している。そのため、ユーザーの協力を得ながら、当社も価格転嫁の交渉を始めている」

――価格面以外での課題は。

 「従業員は155人おり、定着率は良いものの、人材面がネックだ。特に、理系技術者と工場製造員がなかなか採用できない。仕事は忙しいが人手不足は当分続くだろう」

 「今年4月から大卒が1人、高卒が4人入社する。景気動向に左右されず、今後もコンスタントに新卒を確保したい」

――国外事業については、UAEのラス・アル・ハイマ首長国に金属部品に対する高性能防錆処理加工とその販売を行う、TAKENAKA MIDDLE EAST LLC(TME)をGSIクレオスと共同出資で設立しました。

 「16年11月に設立したが、外国人労働者などがそろいフル稼働体制となったのが去年の11月。現在は以前から『タケコート』の実績がある国営石油会社、ガスや海水淡水化プラント向けなどを中心にPR活動をしている」

 「現地対応することで、価格面と納期面でのサービス向上につながっており、新規ユーザーも増える見込み。TMEは設立3年で単年黒字、5年で投資回収を目標に取り組んでいる」

――日本やTMEから諸外国に輸出をする。

 「TMEを設立したことで、日本からの直接輸出はベトナムなどASEAN地域に、TMEからはUAE国内を中心に中東諸国に販売している。国内外問わず、独自技術の高品質製品をPRしながら、既存ユーザーの需要掘り下げと新規ユーザーの獲得を目指す」(綾部 翔悟)

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