津波避難に自転車を! パンクしない自転車や発電する電動自転車も

自転車で避難。考えてみませんか?(Photo AC)

南海トラフ地震の30年内発生確率が70〜80%と引き上げられました。南海トラフの地震といえば、地震だけではなく、津波が心配される地震でもあります。そこで、今週は津波対策としての自転車の可能性についてお届けします。

みなさんのお宅には自転車がありますか?モノを増やさない防災を実践している我が家ではありますが、自転車保有台数が、家族の1.7割増あるのです(汗)。多すぎっ!

というのも、私も自転車にテント積んで北海道の峠越えしたりキャンプをしてましたが、それ以上に夫が大の自転車好きで。昔はマチュピチュを自転車で登ってみたり、あのウユニ塩湖を自転車で走ったりしてたそう。

ウユニ塩湖(ボリビア)。自転車で走ったら楽しそう♪(Photo AC)

地図に道の書かれていないアタカマ砂漠(チリ)を縦断したときは、砂に残った車のタイヤの跡を観察して、いいタイヤを使っている方が街に向かっているはず(鉱山に向かうトラックは単純なパターンなのに対し、ツアー車の4WDタイヤは、接地面全体に模様がつくアメリカ製のBFグッドリッチ社のタイヤだった)と判断したとかで。そんな自転車大好きの我が家なので、津波避難の時の基本的な考え方に自転車が出てこないのを残念に思っていました。

車での避難が渋滞を巻き起こし、死者を増やすということで、2012年3月以前は、「避難のため車を使用しないこと」となっていました。しかし現在は、交通量が少なく車に頼っている地域もあるし、何より車でなければ移動できない方もいるので「津波から避難するためやむを得ない場合を除き、避難のために車を使用しないこと。」と、車に関する避難については議論され、例外も認めるよう変化してきました。

出典:国土交通省「津波避難の基本的考え方」 http://www.cbr.mlit.go.jp/mie/enquete/sub.html 

でも、車以外はあまり語られていなくて、「避難にあたっては徒歩によることを原則にすること」とあります。自転車はいけないとまでは書いてないですが、原則として徒歩とされているし、自転車についての議論もされてこなかったので、通学で自転車を使っている、もしくは津波の心配のある地域の中高生の避難訓練であっても、自転車は使われていません。

東日本大震災の時、私は千代田区にいたので、自転車ショップに列をなして購入する方をたくさん見ました。それ以外あまり語られることが少なかった自転車での避難なのですが、ここに来て東京都からこんなニュースが飛び込みました。

■東京消防庁移転へ災害対応強化費3倍増 都来年度予算、都民提案事業は自転車整備支援

~災害対応力の強化では、都民提案事業として自転車整備支援事業で1億円を計上する。災害時の移動手段として重要な自転車の点検・整備の推進や、安全利用の普及・啓発を行う。~

http://www.risktaisaku.com/articles/-/4640

この、「災害時の移動手段として重要な自転車」というキーワードに、自転車好きとしては、やっと日の目を見た思いが♪ただ、まだ津波での避難ということでは、自転車の話題は少ないのかなという思いです。ところで、実際に全国で自転車を通勤や通学に使っている人はどれくらいいるかというと、

出典:総務省統計局「国勢調査利用交通手段」(※10年ごとの調査なので、2010年が最新)
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/final/pdf/01-11_5.pdf

バイクと自転車が一緒に計上されている国勢調査の数値なので、自転車だけではないのですが、15歳以上の方で、「オートバイ又は自転車」は14.6%。自家用車は46.5%に対し、徒歩は7.1%でしかありません。徒歩は少ないですね!

中高生でどれくらいのこどもたちが自転車通学をしているか調査した資料も最新のものは見つけられなかったのですが、2009年にベネッセが実施した調査では、高校生の半数が自転車通学をしていると書かれてあります。

■自転車通学の平均は約20分、マナーには問題アリ?(ベネッセ教育情報サイト)
http://benesse.jp/kyouiku/200907/20090709-1.html

その時よりもさらに、地方のバスの便が減っていたり、少子化による統廃合で学校が遠くなったという声もお聞きしますので、自転車通学の割合は増えているかもしれません。災害時、特別なことは出来ないものです。いつも使っている自転車で津波から避難することができた方が現実的です。自転車を使って避難訓練を実施し検証してみる地域がでてきてもよいかもしれません。

日常の延長であるということ以外の自転車の利点をあげてみると、いわずもがなですが、自転車は徒歩より早いです。自転車のスピードはママチャリでも時速15Km。津波から避難するため坂を登るということになって、半分以下の時速6キロになったとしても1分間に100m進めます。

元気な大人の歩く速度は時速4Km。だから、1分間に66mとなります。坂道だともっと遅くなるので、徒歩だと距離をかせげないのは自転車と比較するまでもないという感じですよね。足腰が弱ければなお遅くなります。もちろん長距離の坂道を走れる人は、自転車よりも早い方もいます。そんな人だったら走って逃げてください!

そして、ロードバイクやクロスバイクだったら、特別訓練していない人でも平地で信号がなければ時速30kmは苦労しなくても出せるかと思います。坂道も、それらは軽いので登りやすいです。未舗装道をあがるのであれば、マウンテンバイクですね♪

さらに、最近は電動アシスト自転車の方も多く見かけます。最高速度が時速24kmと法律で設定されているので、それ以上になると電動アシストはなくなりますが、脚力がなくても1分間に400m進めるのはありがたいです。坂道をあがる時にこの速度はでませんが、それでも鍛えた自転車乗りと肩を並べて走ることが可能(もちろん人によるんですが)なんていうYouTube動画も見たことがあります♪

自転車だと他にもいいことが!他の人を乗せたり、赤ちゃんやペットを乗せることも可能だということです。と、あらためて書いてみて、なぜ今まで自転車で避難しようという声があがらなかったのかと不思議に思ってしまいますが、それは自転車好きの贔屓(ひいき)目なのでしょうかね???

パンクしない自転車がいよいよ2019年発売!

ガラスが飛散していたりして、タイヤのパンクが心配という声もありますが、これについては、取材してきましたよ!パンクしない自転車として話題になっているこちらを。ブリヂストンサイクルのエアフリーコンセプト。

エアフリーコンセプト装着車 (画像提供:ブリヂストンサイクル)

(画像提供:あんどうりす)

タイヤに注目してください!うーん!かわいいっ!!と、かわいさに注目してしまいがちですが、特殊形状スポークで荷重を分散しているので、空気を入れる必要がないのです。空気を入れないから、パンクしません!リサイクル可能な樹脂やゴムを使っているのでエコ素材でもあります。

写真では赤い部分が柔らかそうに見えます。サスペンションみたいに押すと、ぐにゃっとするのかなと思ったら、そんなことはなくて、弾力性が高く、しっかり地面を支える感じでした。乗って荷重した感覚は、当たり前ですが、普通にいつもの自転車です。

発売日は、2019年予定ということです。お値段ともどもまだ未定。タイヤの色も赤だけではなく、自由に選べるようになってきそうなので、普段から楽しい気分で自転車を使えますね!発売が楽しみです♪

その他、すでに発売されているタイヤでも、ノーパンクタイヤや耐パンクタイヤがあります。ノーパンクタイヤは、タイヤの中に空気を入れるのではなく、ジェル、ウレタン、発泡エラストマーなどが入っています。耐パンクタイヤは、タイヤのゴムを厚くすることで、異物の貫通や摩耗を防いでいます。

画像提供:東部 http://www.aero-life.jp/product/2016-17_vol1.pdf

通勤、通学に使っていれば災害時も安心ですね。また、サイクリストから言わせてもらえば、いつもちゃんと空気をいれておけば、そうそうパンクしないってことも知っておいてほしいです。空気圧が足りないまま乗っていると段差を越えた際に、リム(タイヤが嵌まっている金属の輪っか)と段差の角の間にチューブが挟まれて、それでパンクしている人が多いのです。タイヤの横に書いてある空気圧まできちんといれておけば、普通のタイヤでもそう簡単にはパンクしないレベルになっています♪

空気圧が足りなくなるとお知らせしてくれる器具も出ています。

画像提供:あんどうりす

画像提供:ブリヂストンサイクル

 空気ミハル君は、タイヤの空気圧が不足したことを赤いサインでお知らせする車輪内側に装着された装置です。 空気ミハル君の赤いサインが見えたら、タイヤに空気を補充しましょう。空気不足によるタイヤの摩耗やパンクを防ぎます。

出典:ブリヂストンサイクル
http://faq.bscycle.co.jp/content/1130.html

次は発電できる電動アシスト自転車の紹介です。アウトドアの人はキャンピングカーや電動アシスト自転車に否定的かと思われているようですが(笑)、楽しく日常使いできればそれでいいという「ゆるアウトドア」好きな私は、全く気にせずおすすめしてしまいます♪

災害時に発電できる自転車も!

こちら、エアロアシスタントは、災害時にも役立つ発電できる自転車なのです。
http://www.aero-life.jp/aero/index.html

画像提供:東部

この自転車のモードは3つあります。

●通常モード:アシスト1:1、下り坂で自動充電(家庭での充電必要)
●パワーモード:アシスト1:2※、下り坂で自動充電(家庭での充電必要)
●充電走行モード:アシストゼロ、充電のみのモード(家庭での充電不要)
(※パワーモードはアシスト力が2倍。時速10kmまで)

自動充電というのは、下り坂の惰性走行時に充電される仕組みです。何故自動充電できるのかというと、モーター部分に回生モーターと言われるものを使用しているからなのです。

 出典:AIRO LIFEhttp://www.aero-life.jp/product/2016-17_vol1.pdf

 回生モーターは、新幹線にも使われているモーターです。ペダルを漕がずに惰性で走っている時や、坂道を下る時、モーターは発電機になってしまうのです。

どういうことかというと、モーターと発電機の仕組みは同じなのですが、力の使い方が逆なのです。モーターは磁石と電気を使って力を作っている(フレミングの左手の法則)のです。発電機は磁石と力を使って電気を作っているのです(フレミングの右手の法則)。

惰性走行や下りでは、力をもらってしまうので、電気を使うのではなく作り出す発電機になってしまうのです。そこで、今までは電気を熱に変える回生抵抗という部品を使って発生した熱を捨ててしまっていたのです。これを再度バッテリーまで戻してあげて、電気として再利用できるようにしたのが回生モーターです。走りながら充電できるので、走行距離を伸ばすことができるのです。

そして、回生モーターを使った電動自転車は他にもあるのですが、このエアロアシスタントの面白いところは、モーターが後輪についているところです(他のメーカーで回生できるものはたいてい前輪についています)。

後輪にモーターがあると、両立スタンドで自転車をとめた状態で、ペダルを漕いで発電することができます(発電したものを携帯などに使う場合は別売りの二次アダプターの購入が必要です)。メーカーの表示では、20キロ走行してフル充電となった場合、携帯電話の通話時間は5日と10時間連続通話可能な電力とのことです。

出典:AIRO LIFE http://www.aero-life.jp/aero/

また、充電走行モードでは、アシスト機能がオフになりますのでダイエット&発電器具としても使えるかも(笑)。

画像提供:東部

オプションでチャイルドシートをつけたり、パンクしないタイヤをつけたりできるので、日常使いできて、災害時役立つというのが嬉しいですよね。

ちなみに充電がなくなってもそのまま普通の自転車として走行できます。そして、回生モーターは下り坂で、モーターが発電機となり、発電の抵抗で、ブレーキをかけたような状態になります(回生ブレーキ)。感覚としては車のエンジンブレーキのような感じです。手だけのブレーキがおぼつかなくなる急坂道でも自動でスピードをおさえてくれるので、こどもを乗せているという方には嬉しいメリットになります。でも、下り坂でもっともっとスピードを出したいという人にはデメリットになります。

また、通常の充電器では、充電回数が増えるたび、一回の充電で走行できる距離が短くなるためバッテリーの劣化は早くなりますが、回生充電はゆっくりと継ぎ足し充電を行う為、充電回数が増えてもバッテリーに与える影響がほとんどないとのこと。

ただ、電動アシスト自転車自体、重量があるものです。ロードバイクの3倍近くあります。知らない方も多いのですが、ペダルを踏まないと電動でアシストしてくれません。だから、災害時、押してあるくことが想定されることが多ければ、重さが避難のマイナスになります。

だからこそ、普段使っていて、津波避難の道も試してみて、乗りこなせていることが災害時、とても重要になります。

その他、いつか特集したいですが、運転免許を返納した方でも乗りやすい自転車がでてきていたりと、自転車の可能性は広がっています。

ということで、自転車での避難のイメージを共有してくれる方が増えたかなと思うのですが、いかがでしょうか。

みなさんの地域で想定される津波を調べて、避難できそうな道を実際に自転車で走ってみて、何ができるか、どうすれば早く安全に避難できるか考える機会にしていただければ嬉しいです。

(了)

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