ほのかに照らす

 「灰」は何かが燃えた後に残る物だが、字の中の「火」を「人」とすれば「仄(ほの)か」と読める。灰はそのうち冷たくなっても、人がともす明かりはずっと、ほのぼのと、おぼろげに。「ほのか」にはどこか温かな語感がある▲志ある人たちが街にともした明かりをその始まりとする。今日から長崎市である「長崎ランタンフェスティバル」は今年で25回目。赤や黄色のほのかな光が街に映える▲1980年代、旧正月を祝う春節祭を中華街のイベントに取り入れたのがルーツと聞く。ビニール製のランタン300個を飾り、ちゃんぽん早食い競争や中国かゆのサービスを企画-とくれば、よくある、ささやかな商店街の催ししか思い浮かばないが▲中華街、長崎市、中心商店街が手をつないだのが転機になった。やがて会場は広がり、人は増え、オブジェの美しさは全国に伝わり、人出は2013年に100万人超え▲例えば、古式ゆかしいランタンも、豚の頭が供えられた祭壇も、今どきの中国よりもよほど伝統に沿い、中国人観光客は目を丸くするらしい。中国にはない中国らしさを持ち味とする、いわく言い難いこの不思議▲最初に明かりをともした人たちは「100年続く祭りに」と誓ったという。四半世紀をほのかに照らし、未来も照らし、温かな冬の祭りの幕が開く。(徹)

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