【JFE鋼材「レベラー工場」稼働50周年】トラック部材向けコイル加工手掛け半世紀

 JFE鋼材(本社・東京都中央区八丁堀、社長・石原慶明氏)でトラックフレーム用部材向けコイル加工を手掛ける「レベラー事業所・レベラー工場」が、1968(昭和43)年1月に現在の事業拠点である千葉県市川市千鳥町で操業を開始して以来、今年1月で50周年を迎えた。これを記念し、きょう16日に浦安ブライトンホテル東京ベイで「レベラー工場稼働50周年記念祝賀会」を開催。親会社JFEスチールからの来賓も含む関係者が集い、節目を祝う。

前身は川鉄鋼材・市川

 旧川崎製鉄と旧日本鋼管(NKK)が経営統合し、JFEスチールが誕生したのに伴い、04年10月に川鉄鋼材工業と東京シヤリングが合併。現在の「JFE鋼材」が発足している。

 JFE鋼材「レベラー事業所・レベラー工場」の歴史をひも解くと、前身は「川鉄鋼材工業の市川工場」であり、そのさらに前身は「泉尾鋼業」となる。

 泉尾鋼業は、1934(昭和9)年10月に大阪で創業した加藤為之商店にさかのぼる。その後、泉尾シャーリング工場、泉尾鋼板剪断と社名を変更した。1950(昭和25)年に川崎製鉄が創立したのに伴い、川崎製鉄の指定問屋となり、その8年後(1958年)に商号を「泉尾鋼業」とした。

 1967(昭和42)年7月。東京・深川枝川町(江東区)に本社を置き、千葉県市川市千鳥町で鋼板加工(厚板シャー・レベラー)を手掛けていた深川鋼業と合併した。これを機に、深川鋼業の市川の拠点を泉尾鋼業の新「市川工場」として開設する。この地が、現在のJFE鋼材「レベラー事業所・レベラー工場」である。

 翌68年1月に鋼板剪断設備を設置し、トラック部材向け加工を開始する。この設備が、スリット&レベラー・シャーのコンビネーションラインとしての第1号機(鋼板剪断機械製)とされている。

 ここから起算して今年1月で丸50年の節目を迎えたわけだ。ちなみに社名が「川鉄鋼材工業」になったのは71年10月のこと。以来、JFE鋼材が発足するまでこの商号が続く。

 もともとの深川鋼業から泉尾鋼業、川鉄鋼材工業、JFE鋼材…。市川の拠点については半世紀の間に社名は幾度か変更したが「トラックフレーム用部材向けコイル加工」という事業内容と機能は一貫して変わらず。ただ、JFE鋼材となる前の「川鉄鋼材工業・市川工場」は川崎製鉄の関東地区における建材向け厚板溶断加工拠点でもあり、同じ工場内でコイル加工と厚板溶断が行われていた。

 JFE鋼材発足から約2年後に、旧川鉄鋼材・市川の厚板溶断事業は近接する旧東京シヤの市川に集約・一元化(2006年9月)。ここが、現在のJFE鋼材・東京事業所東京工場(市川市塩浜)であり、厚板溶断機能を移管したあと、スリット&レベラーコンビネーション加工を専門に手掛ける現在の「レベラー事業所・レベラー工場」となっている。

JFESと一体で

 レベラー事業所・レベラー工場では、JFEスチールとの一体体制のもとトラックのフレーム用部材向けにコイルの委託加工を手掛けている。工場は湾岸立地で荷役岸壁を備え、JFEスチール東日本製鉄所千葉地区の第3熱延工場で製造されたホットコイルが艀で海上輸送される。

 事業所の敷地は1万6711平方メートル。ここに工場建屋3棟(1万800平方メートル)があり、このうち2号棟と3号棟の二棟を「工場」(720平方メートル)と使用し、残りの1号棟は賃貸活用している。

 主力設備のスリッター&レベラー・シャーのコンビネーションラインは、ひとつのラインで原コイルをスリットカットし、同一ライン上でレベラー・シャーまで一貫加工する。

「ハイテン化」に対応

 近年、レベラー事業所・レベラー工場では、高張力(ハイテン)材の加工対応力強化に取り組んできた。

 自動車業界では、環境負荷軽減(低燃費)のための軽量化と安全性を両立するためにハイテン鋼が広く採用されており、トラック分野でも同様の流れにある。「コンビネーションラインのハイテン対応力強化」は、こうした市場の流れ・ニーズに対応するためだ。

 設置から半世紀が経過したコンビネーションラインは、その時々で必要に応じた老朽化部分の改良やリフレッシュ更新を施してきたが、顧客が求めるハイテン鋼の高品質・高精度加工に対応するにはファイナルレベラーの入れ替えが不可欠と判断。14年に着工した。

 ファイナルレベラーのリプレース工事は、足かけ2年9カ月を費やした。ラインを操業させながら、盆・暮れ・正月といったまとまった休みを利用しての集中工事を繰り返したためだ。

 併せてスリッター部分の駆動部増強、シャー部分の剪断用クラッチ増強なども実施。さらには「キャンバー矯正機」も更新している。

ファイナルレベラー更新/高品位加工可能に

厳格管理、ISO認証も

 主に厚物ハイテンの加工対応力強化を目的とした新ファイナルレベラー(本体は東研機械製作所製、制御系はJFEプラントエンジ製)の本格稼働によって590メガパスカル鋼(60キロ鋼)では最大板厚9ミリで最大板幅1850ミリ、620メガパスカル鋼(63キロ鋼)では同9ミリ厚で同1450ミリ、780メガパスカル鋼(80キロ鋼)では同8ミリで同1450ミリまでの高品位加工を可能となった。

 コンビネーションラインそのものの加工仕様は、製品板厚が3・2~9ミリ、製品幅が225~1892ミリ、製品長さが1400~12200ミリ。1~4条切りまで可能だ。

 加工したシート製品は、レーザ計測を用いた「自動キャンバー・長さ測定装置」で全数検査を行う。検査レベルは高度で、ここで万一、キャンバー発生がみつかった製品は、専用の矯正機ですみやかに手直しする。厳格管理によって客先には万全な体制で常に品質要求基準を満たす製品を納入するという念の入れようだ。自動印字装置も装備し、マーキングのニーズにも応えている。

 昨年には品質マネジメントシステムの国際基準「ISO9001」認証取得へのキックオフも開始しており、近く品質管理体制も整う。

「安定収益」を維持

 現在、レベラー事業所では技能職と事務職を合わせて26人、出荷請負い13人の計39人で切り盛りしている。今2017年度の月間平均加工量は5400トン。前16年度実績に比べて7%増加した。堅調なトラック需要を背景に、ハイテン化に対応した設備改良を軸としたラインのリフレッシュ、機能拡充投資が奏功した格好だ。

 月産平均5千トン超えは、2012年度から6年連続達成が確実。この間はもちろん、それ以前をさかのぼっても近年は事業単体としても安定収益を出し続けている。JFE鋼材にとってこのレベラー事業が、厚板溶断事業、船舶事業と並ぶ「経営3本柱の一角」と位置づけられる所以だ。

 時代(トラック業界)の趨勢を読み、ハイテン化対応を推し進め、需要業界とJFEスチールの双方の期待に応えつつ、JFE鋼材としても確たる収益基盤を維持・向上することこそ「三方よし」の経営につながる。

 前身から数えて「工場稼働50周年」の節目を、非常にいいカタチで迎えられたわけだが、事業永続の観点に立てば、半世紀は通過点。関係者が多く集う本日の「晴れの場」を、これからの事業運営について前向きに考え、語り合い、そしてまた明日からの成長・発展への門出となれば意義深くなるのではないか。(太田 一郎)

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