【MLB】シカゴ紙、ダルビッシュの持ち球を“大解剖”「直球の回転率は信じられない」

カブスの入団会見に臨んだダルビッシュ有【写真:西山和明】

レンジャーズ時代も女房役のジメネスが証言、6つの球種を分析

 カブスに移籍したダルビッシュ有投手は、キャンプ2日目の15日(日本時間16日)に初めてブルペン入りするなど、順調に調整を続けている。6年総額1億2600万ドル(約134億円)、出来高を含めると最大1億5000万ドル(約159億円)の契約で加入し、先発ローテーションの柱の一人として期待がかかる右腕に対して、早くも称賛の声が上がっている。

 地元紙「シカゴ・トリビューン」は、レンジャーズ時代の女房役クリス・ジメネス捕手の証言から、ダルビッシュの多彩な球種を“大解剖”。同じく2年間チームメートだったジャスティン・グリム投手の「彼は8球種持っていると思う、6球種しか投げないけどね」という証言をもとに、フォーシーム(直球)、ツーシーム(シンカー)、スライダー、カーブ、チェンジアップ、スプリットを取り上げている。カットボールはスライダーにカウントされているようだ。

 記事では「ダルビッシュが投げる6球種、有効性、そして使用法の分析」として、まずはフォーシームから“解析”。ジメネスの「豪速球だよ」というコメントを紹介。さらに、同選手は「その裏では素晴らしい仕事をしている。回転率は信じられないよ。彼は多くの空振りを奪う。ボールが迫ってくるんだ」とも話しており、投球の軸となるボールの威力を伝えている。

 そのジメネスが「もっと使うべき」としているのが、「右打者に落ちながら食い込むことができる」ツーシームだ。ジメネスは記事の中で「すべてのシンカーが異なるんだ。間違いないく、もっと使える球だと思うよ」とも指摘。カブスでは、ツーシームの割合が増えるかもしれない。

スライダーは「最高の球」、カーブは「打者の膝を崩す」

 そして、ダルビッシュの最大の武器であるスライダーには当然、絶賛の声が上がっている。ジメネスは「僕が思うに、彼の最高の球だ」と証言。記事では「ダルビッシュのスライダーは左右の打者に対して並外れた変化を見せる。また、彼はカットファストボールのように、より鋭く、もしくは手元で変化させることができる」と、右腕の決め球を絶賛している。

 また、メジャー移籍後、スライダーとともにダルビッシュの“代名詞“の1つとなっているのがカーブ。打者の動きを止めるスローカーブで奪う見逃し三振には、地元ファンも熱狂する。「ダルビッシュは異なるスピードで2種類のカーブを投げる。速いカーブは鋭い変化を生み出し『急降下する』と、ジメネスは言う。打者はダルビッシュが投げる90マイル中盤の球にタイミングを合わせているため、遅いカーブは彼らの膝を崩すことができる」。緩急の差は大きく、打者がついてくることは難しい。

 チェンジアップについては「ダルビッシュは今週、ジメネスとこの球に取り組み始めた」と紹介。解説では「ここ何年間かこの球を投げていないが、打者のタイミングを狂わせることができるため、武器になるだろう」と指摘。ジメネスは「打者の体を泳がせるための球だ。右打者の内角に投げるのが難しくなったら、彼はチェンジアップを投げることができる」と、新たな武器になる可能性があると話している。

 そして、最後に出てくるのがスプリット。持ち球ではあるものの、近年は投げていないと同紙は指摘しつつ「彼の最も不安定な球だと考えられているが、この球は急降下し、時折ナックルボールのような変化を見せる」とも分析。決まれば絶大な威力を発揮するボールとの見方だ。

 カブスの名将ジョー・マドン監督は「彼の武器を用いることで、過去よりも完璧な彼の姿を見ることになると思うよ」と話しており、ダルビッシュの持ち球を存分に生かす方針だという。新天地でどんな“化学反応”が起きるのか、注目が集まる。

(山岡則夫 / Norio Yamaoka)

山岡則夫 プロフィール
 1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページにて取材日記を定期的に更新中。

© 株式会社Creative2