「農」をテーマに生け花 小田原

 「農」をテーマに生け花に取り組む、いちかわれいこうさん(69)が、小田原市小台のギャラリー「れBit★Garden」で個展を開いている。農業を営み、華道歴42年。「農民いけばな家」と名乗り、農家の視点を生かして植物の生命力や、物を大切にする心を表現してきた。自身最後の個展。古希を迎えるにあたり、集大成と位置付けている。18日まで。

 いちかわさんは同市出身。麦や菜の花畑に囲まれて少年時代を過ごしたことで植物への関心を持った。就職後に趣味として草月流の華道を始め、本腰を入れるために32歳で退職。家業の農業を継ぎ、「二足のわらじ」で歩んできた。

 「花のきれいな所だけを使うのではなく、身近な植物に手を伸ばすことで誰も見たことがない作品ができるのでは」。農家ならではの着眼点で、ナスの枯れ枝や根付きの麦など日常の中で見られる植物を素材とするアートを発案した。

 5回目となる今回の個展は、3年ほど前から準備してきた。ことし8月に70歳となることもあり、今回で一区切り付ける。

 2月初旬に黄色い花を付け、数多く咲くと五穀豊穣(ほうじょう)の年になると言われる樹齢40年弱の「まんさく」のほか、麦や菜の花などいずれも自ら育てた植物を使用。「絶対に使いたかった」という稲はこたつの中で1週間温めて発芽させ、河津桜はエアコンで暖めた部屋に3週間置いて満開にさせた。

 ギャラリー内には、土から伸びる麦や発芽した稲のほか、鍬(くわ)などの農機具がちりばめられ、紅梅の華やかな香りも漂う。いちかわさんは「物を大事にする農家の心を感じ取ってもらい、身近な物の魅力への気づきが与えられたら」と話している。

 入場無料。午前10時〜午後4時。問い合わせは、同ギャラリー電話0465(36)0054。

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