自殺対策をテーマにシンポ 横浜

 自殺対策がテーマのシンポジウム「若者・こどもたちの『こころ』は今」が17日、横浜市立大学(同市金沢区)で開かれた。「死にたい」という気持ちを持つ若者に接してきた取材者が講演し、当事者の言葉に耳を傾けることの大切さを訴えた。県司法書士会の主管。

 NHKのプロデューサーとディレクターは取材を通じて、死にたい気持ちを誰にも言えずに抱える人に接してきた。昨年夏には、そんな若者の気持ちを受け止める番組を手掛けた。プロデューサーは「長く自殺予防の視点だったが、今は『死にたい』と安心して言える場をつくる取り組みをしている。死にたいの裏には、『本当は生きたい』がある」と指摘。「死にたいと聞くと驚くが、その気持ちの先にどんなことがあるかを聞くことが大事。そういう空気を多くの人と共有したい」と語った。

 ノンフィクションライターは、うつ病だった父親が自ら命を絶った経験に触れた。「『死にたい』と言った父親に私が掛けた言葉が(自殺の)原因になったと自分を責めた」と振り返り、「死にたいと言われたら、まず話を聞く。そして『生きていてくれればいい』と声掛けをするサポーターになってほしい」と呼び掛けた。話を聞くときは受容と共感が必要としたうえで、「若者は向き合ってくれる生身の大人を求めている。大人が自分の弱さや失敗を相手に開示すると子どもは安心できる。不完全な自分を許せる大人が増えなければ駄目」と訴えた。

 講演者と、県司法書士会のメンバーらが登壇したパネルディスカッションも行われ、「地域でつくる生きごこちのいい社会」について意見を交わした。

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