物質材料研、パイプライン腐食させる細菌のメカニズム解明

 物質・材料研究機構(NIMS)は、米国などで長年問題となっている石油パイプラインを腐食させる細菌の研究で、この細菌が鉄を腐食させる詳細なメカニズムの解明に成功した。現在は腐食対策として殺菌剤が用いられるが、今回の成果を応用すれば腐食を招く酵素のみを標的とする薬剤開発が可能になるなど環境負荷の少ない効率的な防食措置につながると期待される。

 NIMSの岡本章玄主任研究員らの研究成果。酸素のない嫌気性環境で活動する「硫酸還元細菌」と呼ばれる細菌の一種「IS5」が鉄から電子を奪う酵素を持つことを実験で証明した。鉄は電子を失うと他の物質と結びつき、さびが形成される。岡本氏らは、この細菌の遺伝子解析で鉄から電子を奪う「外膜シトクロム酵素」を特定。実験では、鉄を模擬した電極からこの細菌が電子を高速で引き抜く現象を観測した。

 鉄から奪った電子をエネルギー源とする硫酸還元細菌が存在する可能性は2004年に報告されていたが、その詳細な仕組みは解明されていなかった。成果は米科学誌サイエンス・アドバンシーズに掲載される。

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