三井物産スチール、4月から4商品部門制へ 三井物産、国内4カ所に「スチールコーディネーター」配置、グループ連携図る

 三井物産スチールは4月1日に約400万トンの商売を日鉄住金物産に移管することを受け、新たな組織体制とすることを決めた。日鉄住金物産への人員移管後、4月1日時点での社員数は約350人(三井物産からの出向者約140人を含む)となる見込み。商品・品種を再編成し、営業部門を四つの商品部門とする。国内拠点は東京、大阪、名古屋の3拠点とし、国内その他地域は三井物産が配置するスチールコーディネーターが「三井物産、三井物産スチール、エムエム建材、その他のグループ会社をつなぎ、連携を取る形とする」(笠松啓二・三井物産スチール社長)考えだ。

 三井物産スチールは4月以降、売上高3500億円規模、取扱数量370万トン程度の鉄鋼専門商社となる。日鉄住金物産への移管は国内取引が多いため、移管後の国内・輸出比率は4割対6割で輸出が上回る。移管するのは新日鉄住金材の商売が多いが、移管後も新日鉄住金材の取扱数量が最も多く、次いでJFEスチール、神戸製鋼所、普通鋼・特殊鋼メーカーなどの製品を幅広く取り扱う形は変わらない。

 4月以降の商品部門は(1)自動車・電磁鋼板部門(2)プロジェクト資材部門(3)機能商品部門(4)インフラ商品部門―の四つ。電磁鋼板を自動車部門に統合し、モビリティー事業領域を包括的にカバーする形とする。

 大阪には西日本統括本部(傘下に西日本営業部)、名古屋には中部統括本部(傘下に中部営業所)を置く。関西以西は西日本統括本部が業務を引き継ぎ、カバーする。北海道、東北、新潟地区は本店の各部門が引き継ぐ。北海道、東北、新潟、中国、四国、九州、中津の各支店は廃止する。国内組織の横ぐしを通すために、業務本部の傘下に国内事業統括部を新設する。

 国内の地方は、三井物産が(1)北海道支社内(札幌市)(2)東北支社内(仙台市)(3)中国支社内(広島市)(4)九州支社(福岡市)―にそれぞれ1人ずつ、スチールコーディネーターを指名して配置する。

 三井物産スチールは新体制となり取扱数量などはいったん減るものの、「既存ビジネスを維持・拡充しつつ、世の中の動きを先取りして主体的に新たなビジネスモデルを創出することに力を入れる鉄鋼商社になる」(笠松社長)としている。そのための新たな組織として、社長直轄で総合力戦略部という部組織を新設。三井物産鉄鋼製品本部の総合事業開発部にある総合力戦略室と同期化して実行案を策定、推進していく。

三井物産の勝登・常務執行役員鉄鋼製品本部長「ワンティーム・ミツイ」/「日鉄住金物産へはエース級の人材派遣」

 三井物産の勝登・常務執行役員(鉄鋼製品本部長)は、3月末で4年間の鉄鋼製品本部長の任期が終了する。最後の大仕事は、三井物産スチールから日鉄住金物産への事業譲渡と、日鉄住金物産の持ち分法適用会社化(出資比率の2割への拡大)だったが「日鉄住金物産と当社グループとの間で、それぞれが得意なところをやり、両社が強みや持ち味を発揮できるウィンウィンのスキームを実現することができた」と感慨深げ。

三井物産・勝常務執行役員鉄鋼製品本部長

 4月から新体制がスタートすることになるが「日鉄住金物産へは三井からエース級の人材を派遣し、日鉄住金物産の収益力を上げ、企業価値を上げることに必死で取り組む。国内の鉄鋼事業から三井が身を引こうと考えているわけではないことは、今後明らかになる人事配置などを見てもらえれば分かることだ」と強調。

 日鉄住金物産との連携強化については「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、ブロックチェーンを含むフィンテックなどを含め、総合商社である三井が全世界に持っているアセット(資産)を日鉄住金物産にどんどん活用してほしい」とした上で、「三井物産の鉄鋼製品本部は、EV(電気自動車)や再生可能エネルギーなど、世の中の変化に商機を見いだし、ビジネスとしての間口を広げていくところに特に注力する。それを実際の鋼材物流に落とし込んでいくのが三井物産スチール。両社の位置付けや役割分担は明確だ」としている。

 鉄鋼製品本部(大手町)の総合事業開発部に総合力戦略室という組織があり、三井物産スチールには「対応するミラー組織として総合力戦略部という部組織を4月1日付で新設する。三井の総合力発揮、つまりワンティーム・ミツイとしての強みを生かしていけるかどうかは、『総合力』と名の付く二つの部署が連携し、新しいビジネスモデルを創出していけるかどうかに懸かっている」と話している。

 大型出資案件として進めている自動車部品メーカーのゲシュタンプ社は、ホットスタンプの国内初工場となる三重県の松阪工場が2月下旬から試運転を開始する予定となっている。三井物産からゲシュタンプに6人を派遣しているが、全自動車メーカーと取引し、設計にまで入り込んでいるゲシュタンプ社を通じたビジネスの広がりは、まだまだ期待できそうだ。(一柳 朋紀)

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