【新日鉄住金グループ企業の〝今〟(18)】〈日鉄住金ステンレス鋼管〉多能工化でムダ・ロス削減 生産量に左右されにくい収益体制に

 溶接ステンレス鋼管の製造販売・継目無(シームレス)ステンレス鋼管の冷間引抜加工を手掛ける日鉄住金ステンレス鋼管(NSSP、本社・茨城県古河市、社長・八尾量也氏)は、新日鉄住金発足からさかのぼること3年、2009年7月に発足した。

 溶接ステンレス鋼管事業について、新日本製鉄(新日鉄)は本体のほか、グループ会社のニッタイとその子会社のコーナンで、一方の住友金属工業(住金)は住金ステンレス鋼管(住ス)でそれぞれ手掛けていたが、両グループともに慢性的な低収益体質が続いていた。

 効率的な生産・販売体制の構築で競争力強化を図るため、新日鉄が100%子会社の受け皿会社「日鉄ステンレス鋼管」を新設し、ニッタイとコーナンの事業を譲受。その上で住金ステンレス鋼管を存続会社として受け皿会社を吸収合併させた。

 現在の生産拠点は、旧住金ステンレス鋼管の古河工場と旧ニッタイの野田工場をそれぞれ「北関東工場古河地区・野田地区」とし、住金ステンレス鋼管で行っていた継目無ステンレス鋼管の冷間引抜加工は、統合後も湘南工場(神奈川県藤沢市)で行っている。合併後、数年間は厳しい状況が続いたが、現在は黒字確保の体制が定着しつつある。

 八尾社長が製造面で特に注力したのが徹底した「ロス・ムダ」の排除。そのために行ったのが現場従業員の「多能工化」だった。現場従業員が〝遊ぶ〟状態を作らないよう、同じ工場内や工場間での応援体制を構築。組織で社員の意識改革を促すために古河地区と野田地区を「北関東工場」とした。「当初は他工場への応援体制は抵抗もあったが、黒字体質が定着しつつある中、徐々に社員の意識は変わっていった」(八尾社長)という。

 購買面では「競争原理」を導入した。従来は決まった業者との取引が中心だったが、複数の企業に見積もりを出させて有利な条件の購買をすることで、コスト削減効果が生まれた。

 合併直後は新日鉄、住金、ニッタイ、住スという四つの異なる文化が入り混じった集合体だった。住金時代に労務関係に従事していたことのある八尾社長は、特定分野・特定会社のカルチャーを押し付けることなく、「良いとこ取り」の政策を推進。発足から約10年が経ち、文化の融合は着実に進んでいる。

 足元、溶接ステンレス鋼管のマーケットは、製造業、建設業など主用途分野の需要が好調。フル生産状態が続く。古河地区では酸洗設備を既存の配管用と他管種の相互運用などによって若干生産量を増やしたが、安定供給体制維持の観点から、製品値上げ推進と一定量の引受けカットによる受注調整を昨年2月から継続している。

 また溶接管・継目無(シームレス)とも不採算品種については、値上げを申し入れた上で了解をもらえない場合は受注を辞退し、大胆な品種転換にも取り組んできた。

 八尾社長は「来期も良好な受注状況が続くだろうが、19年から20年ごろが需要のブレークポイント」と予想する。現在よりも生産量が減った場合でも安定して収益を出せる体制づくりを当面の課題に挙げる。「一人が三つの職場をこなすような多能工化の深化が理想。我々の事業は収益を考える上で人件費と材料費が大きなウェートを占める。人件費でロスが出たら勝負にならない。」(同)。

 昨年4月、新日鉄住金グループに日新製鋼グループが参入した。NSSPは日新製鋼ステンレス鋼管向けに10、12インチ大径サイズのOEM生産をすでに16年から行っている。今後もOEM生産は継続しつつ、技術情報のやり取りや物流面などを考慮したOEM生産体制などを検討していく方針だ。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

 企業概要

 ▽本社=茨城県古河市

 ▽資本金=9億1675万円(新日鉄住金の出資比率100%)

 ▽社長=八尾量也

 ▽売上高=133億円(17年3月期、連結)

 ▽主力事業=ステンレス鋼管の製造・販売

 ▽従業員=328人(17年3月末現在)

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