BTCC:開幕へ向け続々とシートが決定。ホンダ・シビック、BMWの台数増加

 2016年シーズンのBTCCイギリス・ツーリングカー選手権にウエスト・サリー・レーシング(WSR)から参戦し、チーム・ダイナミクスのゴードン・シェドン(ホンダ・シビック・タイプR)と激しいタイトル争いを演じたサム・トルドフが、フォード陣営のトップチームであるモーターベース・パフォーマンスに加入。1年ぶりのシリーズ復帰を果たす。

 2018年に向けWTCC世界ツーリングカー選手権最後のインディペンデント王者となったトム・チルトンを起用し、新たにチーム・シュレッデド・ウィート・ウィズ・ギャラガーの名称に変更したモーターベースは、同時にこれまでのフォード・フォーカスSTからベースモデルをチェンジ。新たに最新フェイズに進化したフォーカスRSを投入する。

 その3台目のフォーカスRSをドライブすることとなった元BMW125i Mスポーツユーザーのトルドフは、その世界的食品企業のネスレがサポートするイエローのマシンではなく、WSR時代にもバックアップを受けた個人スポンサー、ガードXのパートナーシップを継続し『Team GardX Racing』の名称でエントリーする。

 現在28歳のトルドフは、BTCCを離脱して以降は同じイギリス国内のブリティッシュGTチャンピオンシップに参戦。このオフにはBTCC復帰への評価と道筋を探るべく、AmDチューニング.comのアウディS3セダンやパワー・マックス・レーシングのボクスホール・アストラBTCCなどを立て続けにテスト。そして今月末にスペインで行われるプライベートテストで、いよいよフォーカスRSのステアリングを握る予定となっている。

「こうしてBTCCにカムバックすることができて本当にエキサイティングだ」と喜びを語ったトルドフ。

「2016年にシリーズを離れる決断をしたときは、一度自分の頭をクリアにして、何もかもリセットする必要があった。だからGT3のマシンをドライブしてヨーロッパのあらゆる場所でレースをし、ふたたびバトルをする準備をしてきた。もちろん、僕にはBTCCでやり残した仕事があるからね」とトルドフ。

「本当にわずかなギャップでタイトルを逃してしまった時、僕は僕自身が楽しいと思える環境に戻りたいと思ったんだ。でもBTCCに戻ると決断した唯一にして最大の望みは、ドライバーズタイトルの獲得だけだ」

「その目標に向け、モーターベースの環境は完璧なソリューションだった。チームはマシンを再構築し、STに足りなかったものをこのRSで克服した。前輪駆動は僕にとって目新しいものではないけど、もう一度そのゾーンに入るには少し移行期間が必要だろうね。でも、タイトルを獲得できると思わなければ、戻ってきたりはしないよ」

 チーム代表を務めるデビッド・バートラムは、「BTCCでタイトルを争った実力派ドライバーの復帰を歓迎し、その場として我々のチームを選んでくれたことを誇りに思う」と歓迎の言葉を述べた。

「彼はBTCCで過ごした4シーズンでいくつもの勝利を飾り、それと同じように昨年のブリティッシュGTでも素晴らしい仕事をしていた。キャリアのピークでBTCCを去る決断を下し、英気を養ったきたはずで、2016年に中断した仕事を再開する環境を、我々のマシンなら提供できるはずだ」

 またバートラムは、2018年に入ってからトム・チルトンのチームメイトとして長年モーターベースの顔としてエースを務めてきたマット・ジャクソンの残留を発表していたが、ここへきて一転。9年間在籍したチームの歴史の一部とも言えるジャクソンの離脱をアナウンスした。

 2017年シーズンもクロフト戦でチームで唯一の勝利を挙げ、ドライバーズランキング8位に入ったジャクソンだが、今後の去就は未発表のまま。

 これによりチーム・シュレッデド・ウィート・ウィズ・ギャラガーのフォード・フォーカスRSのシートはひとつ空席になったことも意味しており、チームは近日中にその代替ドライバーをアナウンスする、としている。

 その他にもシリーズには大きな動きがあり、2017年までの2シーズンをTCRインターナショナルのクラフト・バンブー・ルクオイルで過ごしたジェームス・ナッシュが久しぶりのBTCC復帰を表明。クリス・スマイリーのチームメイトとしてBTCノーリン・レーシングに加入する。

 チームはこれまで走らせてきたNGTC仕様の旧型シボレー・クルーズからマシンをスイッチし、今季から元チーム・ダイナミクスのFK2型ホンダ・シビック・タイプRを投入。ナッシュにとっても7年間過ごしたシリーズでの戦いを強力なマシンとともに再開することとなった。

 同時にナッシュが所属したTCRの強豪チーム、クラフト・バンブーは新設のWTCRワールド・ツーリングカー・カップには移行せず、TCRヨーロッパに転向することも発表している。

 また、チーム・パーカー・レーシングもBTCCの4シーズン目に向けマシンスイッチを発表し、まさにサム・トルドフがドライブしたWSR製のBMW125i Mスポーツを購入。昨年シリーズ復帰を果たしたステファン・ジェリーに、引き続きステアリングを託す。

 ジェリー自身も後輪駆動マシンに馴染みがあり、スポーツカー転向以前にBTCCで挙げた勝利はすべてBMWという記録を持っている。それだけに、久しぶりの復帰でドライブした前輪駆動のフォード・フォーカスSTより「明らかに親和性が高いはずだ」と期待を寄せている。

「WSRが製作したBMWをドライブできることで、今年は何か起こせる可能性が出てきた。もちろん、WSRが17年にワークス指定を受けて以降のマシンではないし、彼らが昨季から投入したBMW謹製のB48ユニットでもない。でもWSRは自らが製作したこのエンジンとマシンでタイトル争いを繰り広げた。今も一線級の戦闘力を持つと期待していいはずだ」とジェリー。

 さらにホンダのサテライトチームとしてシビック・タイプRを走らせるユーロテック・レーシングは、今季からスウィンドン・エンジニアリング製のBTCC共通TOCAエンジンから、チーム・ダイナミクス同様のホンダ製ユニットに載せ替えると発表。合わせて、代表ジェフ・スミスの息子であり昨季中盤から負傷した父に代わってステアリングを握ったブレット・スミスのレギュラー起用をアナウンス。

 またブルー&ブラックのメルセデスAクラスを走らせるレーザー・ツールズ・レーシングは、エイデン・モファットの残留を決めている。

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