出所後届く手紙が励み 再犯防止に、自問自答続く  U30のコンパス21部 女性刑務官の世界(2)

インタビューに応じる女性刑務官=岐阜県の笠松刑務所、2017年5月24日

 記者が笠松刑務所で33時間の刑務官体験をした後、任官9年目の白木加奈さん(32)=仮名=が取材に応じてくれた。

 「出所後に『頑張る』という手紙をもらうと、良かったと思います」。白木さんは、やりがいをこう話しながらも、受刑者が再び罪を犯さぬためにどんな言葉を掛ければよいか、自問自答しながら働いているという。

 大学では剣道に打ち込んだ。だが、4年生になり、将来の仕事を考え始めても、やりたいと思えることが見つからなかった。悩んでいたとき、部活動の顧問から先輩も働いていた刑務官を勧められた。

 「どっしり構えて監視していれば良いと思っていた」。就職する前に持っていたイメージと実際は違い、最初の数年は戸惑う日々だった。

 罪を犯した人に規律を学ばせる刑務所には決まりが多い。「思っていたより覚えなきゃいけない業務、決まり事が多い。最初のうちは受刑者を指導しようにも、自分が分かっていなくてつらかった」。自身の力不足を感じ、悩む日々だった。

 仕事を冷静に見られるようになったのは5年目ごろから。経験を積むうち、受刑者からの相談にも耳を傾けられるようになった。

 工場での作業中、刑務官が「この仕事を任せるからな。責任重大やぞ」と話し掛けると、受刑者が生き生きとした表情で「頑張ります」と何度も繰り返す場面が印象的だった。白木さんは「親がいないとかの理由で、受刑者には寂しい思いをしてきた人が多い。だから頼られるのがうれしいんだと思います」と説明してくれた。

 時折、出所した人から近況報告が届く。「もう一生刑務所に戻らない」。指導されたことを思い返して頑張っていることが読み取れると、やりがいを感じる。一方で、再び罪を犯して刑務所に戻ってきた人を見ると「『社会に出たい』と言うのも、言葉だけだったのか」と考え込んでしまう。

女性受刑者が生活する居室、窓には鉄格子が入っている=岐阜県笠松町の笠松刑務所、2017年5月24日

 だからこそ出所後の不安を訴えてくる受刑者には「刑務所に戻ってこないように、希望を持てる言葉を掛けてあげたい」と話す。

 勤務は長時間になりがちな上、過密収容と受刑者の高齢化で業務は増加する一方だ。離職率は高い。笠松刑務所の場合、職員の定員は164人だが、2017年8月時点で欠員は14人。刑務所側は「仕事の知名度が低く、働きだして想像と違うとギャップを感じ辞めてしまう」と頭を悩ませる。

 各地の女子刑務所では、内定者と若手の女性刑務官がお茶を飲みながら話す「女子会」を開催している。先輩が新人とペアになり、指導や悩み相談に当たる制度も設けた。

 白木さんは、休みの日は同僚と海やキャンプに出掛けて息抜きする。「それでも仕事の話が出ることもありますけど」と笑った。(肩書、年齢などは取材当時、共同=篠崎真希29歳)

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