金属行人(2月22日付)

 鉄は面白い、というか不思議な金属だとつくづく思う。普通、物質は固体から液体、液体から気体に変わる時に結晶構造が変化する。ところが鉄は、固体の状態でも温度が変わるだけで結晶構造が変わる。相変態という現象だが、こういう性質は鉄だけが持っている▼磁石にくっつく、言い換えれば常温で強磁性があるのは鉄とニッケルとコバルトだけだ。先日、私が家でそれを調べていたら、隣に座っている小学生の子供の教科書に同じ問題が出ていたので少し恥ずかしくなった…。教科書の問いは「金属の中で、磁石にくっつくものは何でしょうか?」。答えは鉄とニッケルとコバルト。ニッケルとコバルトは存在する量が非常に少ないので高価であり、現実的に基礎資材として広く使われるのは鉄だけ。鉄に置き換わる物質はないだろう▼小学生の教科書には「キュリー点(温度)」に関する記述もあった。永久磁石を加熱した時、ある温度に達すると磁力がなくなる温度のこと。ピエール・キュリーが発見した。鉄は770度。キュリー温度に達して磁石の性質を失ったものを、再び元の温度に戻しても磁力は戻らない。いろんな性質を持つ鉄だからこそ、さまざまな特性を発揮することができる可能性を秘めている。

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