【工場ルポ】〈ワイヤロープ流通加工 浪速商工・岸和田サービスセンター〉多種製品を高品質加工

 ワイヤロープ流通加工の業界大手である浪速商工(本社・大阪市北区、社長・川崎宜明氏)の岸和田サービスセンター(大阪市岸和田市)は、敷地内に岸和田営業所と加工場を併設している。同所の従業員は15人で、臨海地区にある大阪鉄工金属団地の最も入口側に位置するため、配送面に優れている。ワイヤロープ製品の高品質加工を行う岸和田サービスセンターを訪れた。

半世紀の歴史持つ

 岸和田サービスセンターは、今年2月で開設50年を迎えた。1989年12月に同市内に岸和田ロックセンター(現岸和田第二倉庫)を開設し当時最大級の2千トントヨロック用プレス機を導入。その後、2002年4月には増築に合わせ岸和田ロックセンターの加工設備を集約した。

 現在、岸和田サービスセンター内には約800トンのワイヤロープを在庫して即納体制を敷いており、ユーザー向けが多い。会社設立からまもなく80年となる歴史から、同社のユーザー数は多く、「産業の命綱」と呼ばれるワイヤロープの加工で多種多様な産業を支えている。

 岸和田サービスセンターでは、主力のエレベーターやクレーン、玉掛け用だけでなく、造船向けおよび遊園地のアトラクションや舞台装置用などのワイヤロープ加工を行っている。そのため、ワイヤロープ加工製品の種類は1千以上取りそろえている。

 同加工場ではベテランの職人だけでなく、20代の作業員も多い。川崎社長は「岸和田を中心とした泉州地区は地元愛が強い若者が多く、定着率がよい。また同業者も多く利便性が高い」と話す。岸和田サービスセンターにはプレス機や自動切断機・自動巻き取り機などが多数そろっており、ベテラン・若手問わず各作業員が同時並行でワイヤロープ加工を行っている。そのため、迅速かつ丁寧に加工できるように大小さまざまな設備が加工場の至る所に設置されている。

オーダーメードの加工設備導入

 浪速商工岸和田サービスセンターでは、東京製綱・赤穂ロープ・東洋製鋼などの国内JISメーカー製品を主に加工している。「多種多様なユーザーへのワイヤロープの販売と高品質加工が当社の強み」と語る。

 ワイヤロープの加工精度など品質向上のために、試験機メーカーの弘達儀器製(台湾・台中市)の加工設備をオーダーメードで2台取り入れている。導入機材は、ワイヤロープにあらかじめ所定の荷重をかけることで、素線やストランド同士の馴染みを良くし、ワイヤロープの耐疲労性能を向上させるプレテンション加工機と、ワイヤロープの送り出し・切断・仕分け工程をすべて自動で行う業界初の50メートルまで対応した自動検尺切断機だ。非常に難易度の高い開発で自動検尺切断機は導入から2年が経過した今年2月から本格稼働した。「弘達儀器社は独自技術やサービス面だけでなく人間力も魅力だ」という。

 両設備の導入により、非常に精度の高いワイヤロープ製品をつくることが可能だ。特にクレーンやエレベーター向けは、長尺のワイヤロープを使用するため、プレテンション加工機で耐疲労性を向上させ、自動検尺切断機でミリ単位に正確に切断することで高品質を実現する。

 業界屈指のワイヤロープ販売および加工量を誇る浪速商工を支える岸和田サービスセンターは、人材・サービス・設備などを強化しながらユーザーの要望に応える品質を常に追求している。(綾部 翔悟)

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