『探してるものはそう遠くはないのかもしれない』新井見枝香著 痛快以外のなにものでもない

 2018年2月現在における迷走女子の道標、明日への原動力といえば、VOGUE GIRLで連載中の「しいたけ占い」と、関テレ制作のドキュメンタリー番組「セブンルール」であると言えるでしょう(アリー調べ)。先日も仕事から帰宅後、とある書店の名物販売員の密着をホゲーと観ていました。彼女の名前は新井見枝香。半分寝ながら観ていたので詳細覚えていませんが、そのあとへんな夢を見たのは確実にその影響でしょう。

 そんな彼女による初のエッセーが発売された。東京の某有名書店の書店員でありながら、「新井賞」という文学賞をつくり、近年話題になっている。隠れた名作にスポットを当てることを目的として作った賞らしいが、それだけ本を愛してやまない彼女の本だ。面白くないはずがない。

 全裸をこよなく愛し、自分のメールアドレスがCcに入れられることを嫌う。漬物が好きで人間が嫌い。でも小説に登場する人物は、どんな人間も愛せるという。書店の家計簿コーナーで品出しをしていたところ、「どんな家計簿を使っているのか」とお客様に訊かれ「使ったことありません」と答えたら30分説教された。自らサイコパスを疑い、だからなのかエッセーはことごとく脱線しまくる……。

 いや最高が過ぎた。自分が自分でしかないことを引き受けた人のエッセーは、痛快以外のなにものでもない。妬み嫉みにまみれてるのにこんなに読後感が気持ちがいいって、一体何なんでしょうね。ずるい!!

(秀和システム 1000円+税)=アリー・マントワネット

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