日経ナショナルジオグラフィック写真賞 粕谷徹さん作品 最高賞(グランプリ)に 2度目の挑戦で頂点つかむ 藤沢市

 「第6回 日経ナショナル ジオグラフィック写真賞」の授賞式が2月19日に都内で行われ、藤沢在住の粕谷徹さん(48)による4枚の組写真「命をつなぐ」が、グランプリを受賞した。

 同賞は、雑誌『ナショナル ジオグラフィック日本版』が2012年に創設。国際的に活躍できるドキュメンタリー写真家を発掘すると同時に、子どもでも感じ取れる作品の強さも求めているという。今回の応募総数は、ネイチャー部門とピープル部門合わせて315人、636点(単写真456点、組写真180点)。著名写真家らによる審査の結果、ネイチャー部門に応募した粕谷さんの作品が最高賞に選ばれた。粕谷さんは前回も単写真で同部門・優秀賞を獲得している。

命の誕生を丹念に

 受賞作品では、海の中で懸命に卵を守り育てるクマノミやマダコ、ガラスハゼ、オニカジカの計4種の姿をとらえた。「産卵や孵化は、一生のうちのハイライト。産みっぱなしの生物もいる中で、今回は卵が孵(かえ)るまで見守って育てる生き物にフォーカスして直球勝負で挑んだ」という。撮影ではこれまでの経験をもとに、それぞれの産卵時期に合わせて西伊豆と北海道羅臼の水深約15mへダイビング。興奮する親魚がカメラや水中ライトに慣れるまで辛抱強く待ち、卵を守る親の表情や生命誕生の歓喜を収めた。

 審査員による講評では、「命の誕生を忍耐強く観察した完成度の高い4枚組。生命体と向き合う写真家のまなざしがしっかりと表現された秀作」「奇をてらうことなく、淡々と提示した点が素晴らしい」などと高く評価された。

 粕谷さんは昨年、会社員を辞めてフリーカメラマンとしての第一歩を踏み出したばかり。ダイビングを始めた13年前にカメラにのめり込んだ。「海にはこんなにユーモラスな生き物がいて、さまざまなドラマが繰り広げられていると知って感動した。一瞬の出会いや、この感動を伝えるには写真だなと思った」と振り返る。

 粕谷さんは「まさかのグランプリに驚いたけれど、高く評価していただいて光栄。今後は、小さな子どもたちが夢中になるような作品を発表していきたい。地元藤沢での個展を開催できたら嬉しい」と語る。

江の島を背景に粕谷さん

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