オリ154キロ19歳右腕が激白 1軍初勝利のフォームを捨て「進化のための変化」

インタビューに応じるオリックス・山本由伸【写真:編集部】

最速154キロ右腕は昨年は23年ぶりに高卒新人勝利を挙げた

 無限の可能性を秘めた19歳がオリックスに現れた。涼しい顔で150キロ台を連発する高卒2年目・山本由伸投手。ルーキーイヤーの昨年は5試合全てに先発し1勝1敗、防御率5.32。チームの高卒新人勝利は1994年の平井正史(現1軍投手コーチ)以来、23年ぶりの快挙だった。宮崎キャンプでは1軍に抜擢され、がむしゃらに1軍に食らいついている右腕に話を聞いた。

 2016年に都城高からドラフト4位でオリックスに入団した山本。その右腕のプロデビュー戦は衝撃の連発だった。2017年8月20日、京セラドームで行われたロッテ戦。150キロを超える直球とスライダー、ツーシームなどを交え5回7安打1失点の好投を見せた。初白星こそその時は逃したものの、代打・井口(現ロッテ監督)にも臆することなく真っ向勝負で三ゴロ併殺に抑えるなど、度胸満点の投球を見せつけた。

「今思えば、すごい経験をさせてもらったなと思います。2軍でも1軍でも必死にやって、気の抜けるところがなかった。本当にがむしゃらにやっていたことがことが良かったと思います」

 最大の武器ともいえるストレート。最速は154キロをマークし、今キャンプの紅白戦でも2月中旬と寒さが残る中で151キロを計測した。山本が追い求めてるのは打者を圧倒する、分かっていても打てない直球だ。

「ストレートにはこだわりを持っている。でも、まだまだ求めているものがいっぱいある。1つずつでもいいので、クリアしていきたい。凄く速くて、伸びるストレート。質をこだわっていって、球速が出ればいい。球速だけを追い求めてるのではないですね。打者がタイミングを遅れて、手元で刺される直球を求めていきたい」

オフにはDeNA筒香と約2か月間、自主トレを共にした

 プロとして初のオフには共通の知り合いを通じDeNA・筒香嘉智外野手らと関西で自主トレを行った。日本球界トップクラスの打者と過ごした約2か月間。トレーニング、ケア、食事、睡眠…自身の野球観を180度変えることになる充実した日々を過ごした。

「本当に得るものだらけでした。出会えてよかった。一番は考え方です。野球も含めて、全てで筒香さんは考えて行動している。口では説明できないんですが、全てがレベルが高くて1つ、1つ無駄なものがなかった。話す言葉が全部いい話なんですよ(笑)。もう、本当に何もかもです。本当にすごい。あの人は絶対に26歳じゃない。人生3回目ぐらいじゃないかと(笑)。本当にそれぐらい考えが深い方です」

 2年目の今年は1軍キャンプスタート。首脳陣からの期待も大きい。

「もしかしたら(1軍キャンプに)入れるかなと思っていましたけど、確信はなかった。1軍だから何か変わるというのはないですが、レベルの高い環境でできることは勉強になりますね。西(勇輝)さんとか、絡んでくれて、コミュニケーションとって下さってやりやすい環境を作ってくれています」

 プロ入り直後の体重は77キロ。この1年間で3キロの増量に成功し、現在は80キロをキープしている。濃密な1年を過ごした右腕は自身の変化を感じるようになったという。

「体の中がすごく変わったと思う。色々な動作をやっていても『強くなったな』と感じるときがある。ボールを投げていても体幹を使えているし、前になかった感覚を感じる。ブルペンでも去年とは球の質が変わっていると思います。今年はもっともっとスピードが出ると思う」

1年目の投球フォームをあえて変更「進化するための変化」

 2年を迎え新たな取り組みも行っている。それは投球フォームの変更だ。投球時にグラブを持った左腕を真っすぐ伸ばし、その状態のまま体重移動を行う。高卒1年目で1軍デビューを飾り、初勝利も手に入れたフォームを失ってまで手に入れたいものとは何なのか?

「自主トレの期間で色々考えて。突き詰めていったら、この形にたどり着いた。今までの自分を上回るための変化であり進化です。進化するための変化なので。去年の自分には全然、満足できる部分が一つもなかった。満足できていれば、今年もそのままでいっていましたが、そうは思えなかった。もっとうまくなりたい。向上心があったので」

「一番は先発で投げたい。1軍キャンプでやらせてもらっているので、やっぱりローテを狙っていきたい。いい選手がいっぱいいるけど、その中でもずば抜けた存在になりたいです」

 由伸の名前の由来は父が巨人・高橋由伸監督のファンだったからと言われているが、本人は苦笑いを浮かべ否定する。

「いや、それなんですけど。違うんですよ、色々と聞かれてちゃんと答えているのにいつの間にか、そうなっていて。本当は母から『由』、父から『伸』を一文字ずつもらって、お祖母ちゃんが付けてくれたんですよ」

 チーム最年長野手・小谷野栄一内野手も、その潜在能力を高く評価している。「体はまだ出来てないけど、将来的にも面白い存在になると思う。1年間投げて自信をつければ先発の柱になる力はある」。昨年、山本を1軍で先発デビューさせた福良淳一監督も「若いのにしっかりとした考えを持っている。あとは体力面でどこまで伸びるか」と期待を込めている。初勝利を挙げたのは敵地でのロッテ戦。まだ、本拠地・京セラドームでの投手、お立ち台は経験していない。そして、新人王の資格も残っている。

「目標ではないですけど、やっぱり本拠地で勝ってみたいです。どんな感じなのか、お立ち台に上がって見る景色はどう見えるのか。そのためにはチームに貢献して試合に投げることが必要ですから。まずは、チームの戦力になる。どんどん勝って、勝ちを付けていきたい」

(Full-Count編集部)

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