守れ江の島の海 片瀬漁協の取り組み

 2020年東京五輪でセーリング競技が開催される神奈川県藤沢市江の島で、海の環境を守る取り組みが続いている。「江ノ島・フィッシャーマンズ・プロジェクト」と銘打った活動の中心を担っているのは江の島片瀬漁業協同組合。北村治之組合長は「体験を通じて、環境問題を身近に考えるきっかけになれば」と語っている。

 今月10日、同市片瀬海岸の片瀬漁港は、150人近くの親子連れでにぎわっていた。この日開催されたのはプロジェクトの一つである「海藻シンポジュウム」。江の島沖で養殖したワカメの刈り取り体験のほか、藻場の保全を紹介するミニ講座も行われ、参加者は楽しみながら地元の海について学んだ。

 同組合は13年、藤沢市とプロジェクトをスタート。以前から、地元水産業を身近に感じてもらおうと、初心者を対象にした船釣り教室を開催してきたが「もう一歩踏み込んで、海の環境や生物についても学べる場があればと思った」と北村さん。

 プロジェクトでは環境や生態系の維持を目的とした水産庁の事業を活用し、ワカメの養殖体験を始めた。参加者は毎年12月にロープにワカメの種を付け、翌年2月に江の島沖の養殖場で育ったワカメを刈り取る。体験では、なぜワカメや海藻が海にとって大事なのかについても伝える。

 10日のミニ講座で講師を務めた潜水士の中嶋泰さんは「温暖化や環境変化の影響で、全国的に海の中の藻場が衰退してきている。藻場は海の森。森がなくなれば、そこに生息する魚や貝も死んでしまう」と警鐘を鳴らす。「少し手を加えることで、生態のバランスを保つことができる」とも伝えた。

 昨年12月には、東北地方の三陸海岸で水中清掃や東日本大震災のがれき撤去を続けるダイバーも参加し、藻場再生へ向けた意見交換を行った。

 同組合によると、2016年夏までの参加者は延べ5千人。北村さんは「プロジェクト自体は小さな力だが、継続していきたい」と話している。

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