【現場を歩く】〈東海鋼材工業・本社工場(愛知)〉現場力向上、加工領域拡大 時代の変化に合わせ「加工一貫最適」を進化

 新日鉄住金グループの中部地区の鋼材加工拠点である東海鋼材工業(本社・愛知県海部郡飛島村、社長・北村光章氏)は、時代の変化に合わせて適切に変化を遂げてきたお手本のような会社だ。中心となる鋼板加工事業は足元、「現場力向上」に取り組むとともに、加工の範囲を拡大。厚板の溶断・穴あけ・開先・曲げ・溶接・組立までを一貫して行う体制が確立している。亜鉛めっき加工などとの製造連携も進め「加工一貫最適」の体制が整ってきている。鋼板加工事業の取り組みと今後の課題をまとめた。(片岡 徹)

 同社の創業は1944(昭19)年。航空機の部品・冶具の製造や鉄骨・鉄筋の製作、建設工事の請負などが創業期のメーンだった。

 1952(昭27)年に鋼板加工部門を設置。今年で66年目となる。58(昭33)年に豊田自動織機との取引が始まる。同社が「フォークリフトの生産をスタートさせた直後で、切板・定尺品を供給。その翌年には富士製鉄(当時)の指定シャー工場となった。

 現在、鋼板加工のほか亜鉛めっき加工、照明柱・鋼管柱の加工(日鐡住金建材から委託)を手掛ける。

 鋼板加工事業部が現在の形に姿を変えるきっかけとなったのは、公共工事の縮減。2005(平成17)年に橋梁事業から撤退したのを機に、豊田自動織機向けの溶接・組立加工を手掛け、加工の領域を大きく広げた。

 現在では、建産機向けの加工が全体の60%以上を占める。また、事業部の売上高は全体の約5割。所属する社員は約100人。月間加工量は2千トンを超す状態が続く。

 2012(平成24)年、主要需要家が橋梁事業から撤退したことにより、事業部の受注高も大きく減少することに。大きな逆風だ。そこで岡勝彦取締役鋼板加工事業部長が徹底的に取り組んだのは「現場力を上げる」こと。「働く人一人ひとりが課題意識をもって改善に取り組む力をつける」ことにより、製造現場そのものを変えることだった。

整理整頓を徹底

 そのためにまず「工場をきれいにする」取り組みを徹底した。整理整頓の2Sを原点に立ち返って実践することから現場の意識改革がスタートした。

 継続的な意識改革への粘り強い取り組みは、徐々に成果を上げ始めた。通路や設備周りは見違えるように整えられ、柱などもきれいになった。

QCサークル活動開始

 次に「QCサークル活動」を開始した。「現場の人が自ら課題を決めて改善に向けた企画を立案し、それを実践。その成果を報告する、という小集団活動だが、最初は現場の抵抗もあった。3チームからスタートし、3年かけて全員参加の活動とした」と岡事業部長。

 時代の変化に合わせた事業体制の強化や変化を行うにも、現場の各人が意識改革を進め、みんなで変えていこうという気持ちにならなければ本当の意味での中身は変わらない。事業部の変革も、こうした取り組みなしには成立しなかったといえる。

品質不良削減に注力

 さらに「品質不良削減活動」にも力を入れた。「現場にある真の原因は何か、を追究するため、チームを作って静止パトロールを実施した。決められた手順書を手に、過去に取られた対策が現場の実態に合っているのかを再確認し、改善につなげている」という。

5軸加工機が稼働/製缶部門を強化、付加価値向上

 こうした取り組みの上に、生産性向上や工場内の物流整流化などが本来の意味をもって具体化する。

 現在、本社工場の主要設備はレーザー加工機4基のほかNCガス溶断、プラズマ切断機など。

 生産性向上への第1ステップ(12年以降)として、精整職場の集約やレーザー切断機増設・プラズマ切断機更新、ショットブラスト・レベラー増設などを相次いで実施。工場内物流の整流化と溶断工程能力向上・品質厳格化対応を推進。

 2016年からの第2ステップでは、設備の再配置とテントハウス新設による物流改善、穴あけ加工機、開先加工機の老朽更新を実施したほか、新たにNC大型5軸加工機を導入。鋼板加工の後工程となる製缶部門の体制を強化している。

 再配置により、新たな製缶スペースが確保され、今後の加工付加価値向上に向けた機動的な展開が可能に。

 テント倉庫新設は、中間置場や製品置場を見直した。加工~出荷までの全体物流の整流化がねらい。

 穴あけ加工の体質強化策では、既設のラジアルボール盤3基とマシニング2基を、大型マシニング1基と小型マシニング2基に更新。穴あけ加工設備は14基体制に集約した。

 同時に、本社工場内に点在していた開先機(機械開先機2機、ロボット開先機3台)を1か所に集約。機械開先機1台を老朽更新し、遊休のハンドリングロボット1台を改造してロボット開先機にリプレースした。

 それに加えて、今回新たにNC大型5軸加工機(新日本工機製、テーブルサイズ6千ミリ×2500ミリ、主軸速度・毎分8千回転)が稼働した。

 立体形状に溝加工などができる。鋼製セグメントをはじめとする付加価値の高い加工部品の受注拡大がねらいだ。一連の対策により、今後は月産加工量を平均2500~3千トンの体制に引き上げることにしている。

 豊田自動織機向けの溶接・組立部門も、スキルがアップしている。製缶加工の高度化とともに、より大型で複雑な溶接・組立ができるようになり「品質厳格化への対応も進んでいる」という。

 岡事業部長は「溶断―加工(穴あけ、開先など)―溶接・製缶を一貫製造できる特徴をさらに強化する」ことを今後の課題に挙げる。

 「加工の付加価値をさらに追求し、一貫製造による短工期、輸送コストの低減を実現し、お客様に対するプレゼンスを高めたい」とする。

 また「比較的小さな部品から橋梁など大物までを加工できるのも当社の特徴。5軸加工機の導入・稼働を機に、精密加工、表裏面罫書など、特殊加工を増やしていきたい」と語る。

 「次世代につなぐ人材を育成し、仕事の仕組みを変えて納期管理、生産性向上をさらに進めたい」と語気を強める。

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