福岡高裁、諫干請求異議訴訟で和解勧告 協議再開 決裂なら7月判決

 国営諫早湾干拓事業を巡り、2010年の開門確定判決を履行せず制裁金を科された国が、開門を強制しないよう漁業者側に求めた請求異議訴訟控訴審は26日、福岡高裁で結審し、西井和徒裁判長は和解を勧告した。決裂した場合は7月30日に判決を下すとした。具体的な勧告を3月5日、国と開門派に伝えるとしており、開門の是非など和解協議の前提となる方向性をどう示すかが注目される。

 関連訴訟では、長崎地裁で16年1月に開門しない前提で和解協議が始まり、国は100億円の漁業振興基金を提案したが昨年3月に決裂した。同控訴審での和解協議は、この決裂に伴い昨年5月に打ち切られて以来2回目。開門するかしないかで双方の主張は依然、真っ向から対立し、和解が成立するかは不透明だ。

 26日は口頭弁論の後、国と開門派が非公開で和解協議を行った。双方によると、西井裁判長は4~5月に計3回の和解協議を開くとした。一方、昨年4月に開門差し止めを命じた長崎地裁判決に対し開門派が申し立てている独立当事者参加の可否について、3月19日に判決を言い渡すとした。

 終了後に会見した農林水産省農地資源課の横井績課長は、佐賀県有明海漁協が基金受諾へ協議を始めたことに触れ、「開門によらない基金による和解が最良」と述べた。基金は「長崎地裁の和解協議で提案した内容とほぼ同じ」とした。

 開門派弁護団の堀良一事務局長は、国の基金に反対する考えをあらためて示し、「(開門派が提案した)開門前提の和解案を協議すべきだ。双方の利害調整を行うのが高裁の役割」と勧告内容を注視する構え。

開門前提の和解協議を主張する開門派の堀弁護団事務局長(左)=福岡高裁
和解協議の内容を説明する農水省の横井績農地資源課長(中央)=福岡高裁

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