[土持幸三の映像制作101]Vol.29 一から作った大人顔負け映像制作

txt:土持幸三 構成:編集部

今年もまた個性豊かな作品が完成

新しい年となり、川崎での小学校映像授業は最後まで残った一校が終わる。ただ、この学校が他の学校と違うのは、夏休みに各自が考えてきた脚本案からクラスで一つを選び、そこから脚本・監督など担当を決めて撮影を進めてきた、いわば小学校の映像制作レベルではなく、大学生や一般の方が行う学校や街を舞台にした自主製作と同じといってよい。

この小学校がある川崎大師周辺では、僕自身もWeb用のドラマなどいくつもの作品を撮影してきて街の人々に多大な協力を得た経験もあるので、この街には映像に対する理解が深いように感じる。もちろん実際の撮影になると小学5年生は各担当同士でブツかり合ったり、サボっていたりする事もあったが、一回、編集の授業を行い、実際に自分たちが撮影した素材でワンシーンが創られていく喜びと驚きを感じた後は、撮影が進んでいくにつれ各担当が真剣になり、自分が何をしないといけないかを理解し行動していく。毎年感じるのだが、この行程が実に素晴らしい。監督の大変さをわかり協力し始め、怒られることはあっても、それぞれの役割を尊重しながら撮影をする。

撮影が進むと徐々に真剣な顔になっていく

今年の作品のテーマは例年とあまり変化はない、いじめ問題を扱ったものが2クラス、友情をテーマにしたものが1クラスだったが、テーマは同じでも内容は違いがある。1クラスは前代未聞の内容が過激?すぎて修正が入ったが、修正版もなかなかシュールな内容で、根本的ないじめ問題は解決されないが、主人公は別の道というか、自分の進むべき道を見つけて、その道を進む、という内容で、監督を務めた女の子が脚本も書いていたと思うのだが、リーダーシップのある彼女のおかげで撮影は一番順調に進んだ。

もう1つのクラスは、転校してきた無口で愛想が悪い男の子が、数人の心無い子供たちにいじめられるが、友達になった子供たちと打ち解けあうも、また転校してしまう。このパターンは毎年あるので謎だ。小学生にはよくある話なのであろうか?テレビ番組等の影響だろうか?

森の中に出現するドア

最後のクラスは「謎の調味料」を探しに不思議な森へと入っていき、その中でケンカしたり、迷子になったりするが、見つけたその調味料は実は別の意味があるものだったという話。このクラスは美術チームがよく頑張って、不思議な森のシーンでは謎のドアが登場し、その扉は自動で開く(後ろに背が低い子が入り人力で動かす)ものだったり、背景に段ボールなどで作った鍋やヤカン、食べ物などを飾り付けて「謎の調味料」が隠されている森を見事に表現していた。各クラスのカメラ担当、録音担当も最初の頃と比べると気持ち、技術の両方とも雲泥の差でだいぶうまくなっていた。本当ならば今の彼らとこれから新しい映像作品を創ればさらに素晴らしい作品になるだろう。

美術チームが木を飾り付ける

9月から続いた川崎市の小学生映像授業が終わり、毎回思うのだが自分が小学生の時にこのような授業があれば楽しかっただろうなと思う。学校や先生方に多大なご苦労をおかけするが、地域の方々も巻き込みインタビューなどを通じて地元の歴史や昔の街の様子を知ることができたり、楽しみながら撮影ができる。インタビューを受ける方々やPTAも同じ学校に通っていた方が多いので非常に協力的でありがたかった。

小学生が創った映像は長く残る。今回は10年前に映像授業を体験し現在、大学生になった昔の児童が集まってイベントで当時の映像を川崎大師の山門前に張った大型スクリーンで観るという素晴らしい事も体験できた。彼らは今年の夏に自主製作で川崎大師地区を舞台に短編映画を製作することを考えているようだ。僕もできうる限りの協力をするつもりでいるが、映像制作を温かく見守る街の人々が最大の協力をしてくれるであろう。小学生が創る映像が微力ではあるかもしれないが、大人を取り込んで地域を活性化しているように思える。

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