《荻窪》「杉並アニメーションミュージアム」がおもしろい!

杉並アニメーションミュージアムの入り口

 エヴァンゲリオンや、ポケットモンスター、ドラえもん、となりのトトロなど、今やアニメーションは日本を代表する文化の一つです。

 アニメは1906年に米国で誕生。日本では、その11年後(大正6年)に初めての国産アニメが制作され、昨年、100周年を迎えました。

 現在、全国には600を超えるアニメ制作会社があり、その約87%の542社が東京に集中。中でも杉並区が一番多く、138社にも上ります(日本動画協会調査2016年版)。

 そんなアニメの“発信地”に、日本のアニメの歴史や制作過程などを紹介する「杉並アニメーションミュージアム」があります。荻窪駅からバスに乗って約5分で行ける、このミュージアムをご案内しましょう。

 まずは、アニメの歴史を知るコーナーから。1917年に日本で初めてのアニメ作品が誕生したことから始まる立体的な年表では、63年に「鉄腕アトム」、69年に「ムーミン」、70年代に入ると「まんが日本昔ばなし」や「宇宙戦艦ヤマト」が制作されたことを知ることができます。

 さらに85年にはスタジオジブリが設立され、その後「天空の城ラピュタ」や「となりのトトロ」が話題をさらい、90年代に入ると「エヴァンゲリオン」や「ポケットモンスター」が登場。特にアニメに関心がなくても、懐かしいアニメを見つけると、「へー、そうだったのか」と思わず感心してしまいます!

懐かしいアニメ作品の名前をたくさん見つけられます

 歴史を知った後は、アニメの原理を体験できるコーナーへ。体験型展示の「ソーマトロープ」は、1825年に英国で発明された、人間の目の残像効果を利用した動画を楽しむ装置です。

 発明当時は、円形のボール紙の表に人の顔、裏に髪を書き、ボール紙の両端に付けたひもをねじって回転させると、双方の絵が一体となり、カツラを付けた人の顔になるというものでした。ミュージアムの展示装置では、ボタンを押すだけで、装置ケースの中にあるリンゴの木のイラストが回転し、ソーマトロープを“体験”できます。

 現在、アニメ制作ではデジタル技術を活用していますが、以前は長い間、セル画(セルロイド製の透明シートに描いた絵)を使い、手作業でアニメ作品が作られていました。

 そのセル画時代のアニメが制作される過程を説明したコーナーでは、アニメの原画や資料などが雑多に積まれた監督、作画監督、美術監督の机が再現されています。説明用のボードには、企画作業段階で作るアニメの設計図とも呼ばれる絵コンテを制作するために、30分間のテレビアニメ用で2週間、劇場版では1カ月から数カ月かかると書かれていて、アニメ制作にかかった長い時間や膨大な労力に驚かされます。

 アニメに声を吹き込むアフレコ体験ができるブースもあるので、ぜひお試しを。ブースの前には、1917年に公開された日本最古の短編コマドリ式アニメ作品も展示されています。

セル画を使って、アニメを制作した時代の監督らの仕事机を再現
セル画を使って、アニメを制作した時代の監督らの仕事机を再現

 このほか、現在のデジタル技術を使った制作現場を再現した部屋もあります。ここでは、来場者が簡単なイラストを描き、パソコンで編集し、パラパラアニメを制作できます。

現代のアニメはデジタル技術を使って制作されています

 館内では、アニメに関連した企画展を年に3、4回実施。現在は「みんなのうたの世界展」(3月25日まで)が開催されています。「みんなのうた」は61年にスタートしたNHKの歌番組で、そこで使われた絵コンテや原画、人形などが展示されています。

 「みんなの歌」が懐かしくなって、もう一度見たいなぁ、と思ったら館内のシアターに立ち寄りましょう。150インチのスクリーンで「大きな古時計」や「山口さんちのツトム君」、「おしりかじり虫」、「手紙~拝啓 十五の君へ~」などを鑑賞できます。休日には、3世代で訪れる家族が多く見受けられるそうです。

 ミュージアムの運営担当スタッフの藤田輝さんは「来館者はひと月に3000~4000人ほどです。東北や東海地方からの修学旅行生やアニメ制作会社の人が新人を連れて見学に来ることもあります。小学生の時、見学に訪れ、成人してアニメ業界に入ったという人も来ました。とてもうれしかったですね。このミュージアムでは世代に関係なく、アニメを見るだけでなく、制作する楽しさも知ってもらいたいと思っています」と語ってくれました。

 アニメに関心がある人はもちろん、関心がない人も楽しめるミュージアムにお出かけしてみませんか。これだけ充実した展示でも、なんと入館料は無料です!

杉並アニメーションミュージアム

所在地:杉並区上荻3-29-5 杉並会館3階

開館時間:午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)

休館日:月曜日、12月28日~1月4日

入館料 無料

詳細は http://sam.or.jp/

企画展「みんなのうたの世界展」

開催期間:3月25日(日)まで

※最終日は16時で閉館

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