【片言隻句】「オン・トラック」と現場

 「言いにくい話ではあるが」と前置きして大手鋼材商の社長が話し出す。物流問題だ。

 「オン・トラックの荷下ろし条件が、実態としてどこまで徹底されているか」という話。「徹底はできていないね」と表情は曇る。「他社が自ら荷下ろししてしまえば、自分たちもやらなければ、という感じになってしまう」。

 自動車メーカーなど大手の製造業では「オン・トラックの荷下ろし条件を徹底すること」と、折に触れて話題が出る。系列の部品メーカーなども含め相当変わってきているが、現場での実際となると、竹を割るように「明快に」はいかない。

 製造業全般に頭が痛い問題「人手不足」が話をより複雑にする。多くの運送会社は、トラック台数よりも運転手の数が少ないという。逆に、荷の数も手間も、等比級数的に増えている。自動運転は魅力的だが、実用化には時代がまだ早い。

 諸コストも上がり、運送契約の見直しが少しずつ進んでいる。誰がまいた種かは分からぬが、結果的にすべての配送業務には対応できなくなりつつある。

 中には「台数を減らして」と契約先の運送会社から求められる鋼材商もある。販売数量を確保しながら、顧客へのサービス向上を目指す扱い筋にとって、その要請は「屈辱的」とも受け取られる。

 重量物である鋼材の積み下ろし。この業務を誰がやるのか。どういう形で行うにしろ、必要な仕事。人手不足の中で、それがクローズアップされてくる。運転手が安易に実行し、それがもし災害につながったら。自社配送ならば、その問題は解決するのか。そういう話でもないようだ。

 何事もそうかもしれぬが、認識の仕方、価値観は、時代とともにどんどん変わっていく。しっかりと変化をつかんでおかなければ。

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