NTTドコモのドローン事業「docomo sky」 発表会での中山副社長の説明を紹介 「パートナーと効率化、高度化を」   NTTドコモが2月21日に発表した企業向けにドローンの運用を支援する「ドローンプラットフォーム docomo sky(ドコモスカイ)」が大きな反響を呼んでいる。発表会に登壇した中山俊樹副社長の発言を改めて紹介する。

社内パイロット、すでに100人ほど育成

新開発の「ドローンプラットフォーム docomo sky」について、これまでのドローンビジネスを交えて説明するNTTドコモの中山副社長

 本日は発表会にお越しいただき、ありがとうございます。新しい取り組み「docomo sky」を説明させて頂きます。
 われわれは昨年4月、「中期戦略2020 beyond宣言」を発表しました。
 (https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2017/04/27_00.html
 そこで、新しいライフスタイル、ワークスタイルを変えることにチャレンジする、とアナウンスをし、ドローンについては、これよって仕事の省力化、効率化、高度化を図るという方針をご案内しました。
 ドコモは昨年からドローンプロジェクトを進めております。これまでは自社の基地局で試して参りました。千葉市、福岡市、仙台市などでトライアルもさせて頂きました。開発した球体ディスプレイの活用法を模索する取り組みも進め、社内のドローンパイロットも100人ほど育成しております。基地局の安全な点検をドローンでどうすればいいのかということも検討しております。
基地局についていえば、地上から30メートルとか、40メートルとか、そういったところにあります。
 (点検作業では)事故も一定の確立で発生します。人が登るかわりに、ドローンが点検をできるなら、それがどれぐらい安全確保、効率化、省力化につながるのか。そんなことを社内で検討して参りました。災害発生時に、空飛ぶ基地局としてドローン活用しながら、ネットワークを復旧する、といったことにも取り組んできました。

ドコモがドローンに取り組む意義

 われわれがドローンに取り組む意義としては、docomo自身が携帯のネットワークを持っているということがあります。広いエリアのインスペクションをしようとすると、目視外飛行が必要になる時があります。セルラーのエットワークを活用して、ドローンの運航のマネジメントをしていくことが、われわれがやる意義があると思っています。
 また、「このドローンは〝正しいドローン〟なのか。飛んでいていいドローンなのか」ということが起こります。それを判断するには、認証が重要です。認証の技術は携帯電話のモジュールの持つ認証技術が活かせます。決済のプラットフォームも活用頂ける。そんなことも強みになるのではないかと考えています。
 さきほど申した自社活用も、われわれが取り組む強みだと考えられます。

docomo skyはパートナーと共に作るプラットフォーム

 ドローンプラットフォームについて、われわれは「docomo sky(ドコモスカイ)」と名付けました。これについて概要を説明いたします。
 これは、クラウドコネクト、運航支援、ビジネス支援、解析支援。この4つの機能コンポーネントで構成されています。
 これをパートナープロバイダー様、ドローンメーカー様、センサーメーカー様、エンジニアリング会社様、AIを含めた解析サービスを提供される方々と一緒に仕上げて参ります。
 ここに「クラウドコネクト」と書いてございます。通信モジュールで、ドローンがクラウドにつながることです。つながることでクラウドからマネジメントができる。複数台の自動飛行とか、遠隔でも飛ばせる。なにより、仕事のために使うということであるとすると、現場で静止画、動画、気象データなどのデータを取り、そのデータをリアルタイムでクラウドに上げることができ、リアルタイムに処理をして、リアルタイムにドローンに指示をする。リアルタイムのデータ通信というものが、可能になります。
 本日は「開発」の発表です。商用化は年内を考えております。
 これは、農業に使う場合、水産業に使う場合、建設現場で使う場合、エジニアリング、プラントなど産業や現場ごとに、利用の形態が異なると見込まれることに関係します。太陽光パネルの点検については、どう使うか、ということを検討していく取り組みをパートナー様とスタートさせます。
 このようにパートナーのみなさまと、利用形態、データの解析手法、アルゴリズム、AIのエンジンの選択といったことを一緒に考えて、サービスを最終的に作りあげ、世の中のエンドユーザーにご提供したいのです。要は、プラットフォームを一緒につくるパートナー様もいらっしゃるし、産業界に適用するためのパートナー様もいらっしゃる。こうした方々と数ヶ月、ぜひご一緒に考えて、ドローンの適用を実ビジネスにつなげていきたいと考えています。

<ここで動画を上映:https://www.docomosky.jp/

南国殖産とソーラーパネル点検 解析時間を4分の1に

 Docomo skyについて、プラットフォームとしての4つのコンポーネントを中心にご説明いたしました。
 これを活用して、鹿子島県の南国殖産株式会社様(鹿児島市)

     南国殖産:https://www.nangoku.co.jp/

という、日本で有数の太陽光パネルの発電所をいくつも運営されておられる会社とdocomo skyを活用して、パネルのインスペクションを3月1日にはじめます。
 南国殖産様に提供する価値は、省力化、効率化、それに画像解析をからませる高度化。この3つが軸になります。オペレーションは大いに簡易になります。
 これまで重ねたミニトライアルを見る限りでは、解析時間は従来の4分の1の短縮できるのではないか、異常パネルの検出も従来の部分的なドローン活用や、人による巡視とくらべて3倍ぐらいに精度を向上できるのではないかと見込んでおります。

発表会ではdocomo skyで活用される予定の機体とデバイス。南国殖産とのソーラーパネルイスペクションではさらに大きな機体も使われるという

「試してみたい」の声に応えるため「スターターサポート」用意

 本格的なサービスの提供前に、まずドローンってどんなものか、ドローンがどんなふうに仕事に活用できるのか試してみたいという方もいらっしゃる。そんな方のために、今年春から「ドローンスターターサポート」の提供を開始します。
 ドローンのレンタル、パイロットの派遣、飛行申請、ドローンを農業に使うといってもいろいろとそろえないといけませんし許可も必要ですが、こういったものを一手にお引き受けするサービスとして、パッケージとして春からご提供したい。
 基本的なビジネスモデルのおさらいですが、ドローンのプラットフォームを先ほど申し上げた「+d(プラスディー)パートナー」の会社さま、たとえばエンジニアリング会社、警備保障会社、建設コンサルタント、太陽光パネルの会社、もちろんエンターテインメントで使う場合は、広告代理店様。こういった方々と一緒になって、サービスのモデルを産業界ごとに考えて、適用領域ごとに考えて、エンドユーザーにより使いやすい姿に仕立て上げて参ります。年内にサービスを開始するため、きょうから進めます。
 エンドユーザー様に提供する「ドローンスターターサポート」のようにドコモが直接エンドユーザーにお届けするケースもありますが、基本的にはパートナー様とビジネスを共同化することが、このビジネスのポイントと考えています。
 実際の運用をご一緒にお考えいただくために、「ドコモセルラードローン・オープンパートナーシップイニシアティブ」を発足させます。4月にエントリーを開始します。災害、配送、公共インフラ、農水産。いろいろな適用領域が考えられますが、幅広い分野のいろいろな働き方、ワークスタイルを変え、それによって省人化、効率化、高度化をはかることを、ドコモと一緒にお考え頂き、新しいビジネス、新しい社会基盤づくりにつなげていきたいと考えております。
インフラ面では東京電力ホールディングス株式会社様と連携、提携をすることにしました。東京電力ホールディングス様は管内に長距離にわたる高圧線の送電網をお持ちです。ドローンにとって飛行ルートになり得ます。われわれは無線を通じてドローンを制御しながら、解析までつなげることができます。この組み合わせによって、ドローンの新しい社会インフラを作っていくことに取り組む。そのための共同検討を開始しました。

ドコモ社内に「ドローンビジネス推進室」を4月に発足

 2018年3月1日、いよいよセルラードローンによるソーラーパネル点検に、docomo skyを適用して参ります。簡易版として、スターターサポートの提供も初めてまいります。セルラードローンのオープンパートナーシップも4月に募集を開始します。年内には具体的な商用サービスの提供をはじめ、2019、2020年に、ドローンの次世代インフラ基盤を作っていきたいと考えています。
 4月1日には、社内に「ドローンビジネス推進室」という組織を発足さえ、各界、いろんな層から集まって頂いて、ビジネス作りの母体にしたいと考えています。
 「beyond宣言」にも盛り込んだ、ソリューション協創、スタイル革新など、新しい社会基盤を作っていく。5Gでさらに高度化した社会インフラをどう作っていくか。作業をどう省人化し、効率化、高度化をするのか。こんなことにチャレンジをして参りたいと考えています。
 以上で説明を終わりにします。

docomo skyの紹介ページ:https://www.docomosky.jp/

今後のドローンビジネスの展望について説明するNTTドコモの中山俊樹副社長

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