【〝雑品スクラップ〟規制強化へ】〈(中)バーゼル法〉規制対象物を明確化 給湯器、配電盤など省令明記へ

 バーゼル法(正式名称「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」)はバーゼル条約の国内担保法で、経済産業省と環境省が共同所管している。バーゼル条約は、廃電子基板や使用済み鉛バッテリーなど有害廃棄物が越境移動する場合、輸出国と輸入国の間で「事前通告と同意」の手続きを行い、事業者には輸出入に際して「移動書類の携帯」を義務付けている。バーゼル法では事業者に対し外為法に基づく輸出入承認も義務付けている(※手続きイメージ図参照)。

バーゼル法改正の背景

 バーゼル法は1992年の制定から約25年間、改正されていなかった。その間にリサイクルを目的に廃電子基板や鉛バッテリーの日本からの輸出が増加。近年は雑品としてバーゼル対象物がスクラップに混合されて不適正に輸出されるケースが増えているほか、不法取引として輸出先国からシップバック(返送)要請される事案、輸出先で使用済み鉛バッテリーが環境上不適正な取り扱いをされる事案などが問題となっていた。

輸出の主な改正項目

 昨年6月16日に公布された改正バーゼル法(今年10月1日施行)では、現在はサービス告示で規定されている特定有害廃棄物等の範囲(規制対象物)を「省令で定めるもの」(法第2条第1項第1号イ)として法的に明確化した。

 また、バーゼル条約上の規制対象物には締約国間で多少の差異があり、シップバックが繰り返されることがあった。こうしたシップバックを予防するため、輸出先国で条約上の有害廃棄物とされるものを特定有害廃棄物等(規制対象物)に追加し、輸出承認を要件化(法第2条第1項第1号ホ)した。

 使用済み鉛バッテリーなどが輸出先で不適正に処理され、環境汚染を引き起こすことのないよう、輸出先での汚染防止措置について環境大臣による確認事項を法的に明確化した(法第4条第3項)。

規制対象範囲の方向性

 省令には規制対象物として、雑品スクラップに混入されることが多い使用済家電製品(家電リサイクル法の対象4品目、小型家電リサイクル法の対象28品目)を明記する。これらは廃棄物処理法の「有害使用済機器」と同じであり、同法との一体的な措置を図る。

 加えて、現場での迅速な判断ができるよう家電製品32品目と同種の業務用機器や給湯器、配電盤、無停電電源装置(UPS)、冷却用コンプレッサー(黒モーター)も規制対象として省令に明記する。

 電池や廃電子基板に関してはサービス告示でも規制対象だが、雑品スクラップなどに混入した場合の取り扱いが明確でなかった。このため、混合物に混入した電池や廃電子基板なども規制対象となるよう省令などで明確化するとしている。

シップバック防止対応

 輸出先国が規定する有害廃棄物が日本の規定と一致せず、シップバックになる場合、輸出先国において条約上の有害廃棄物とされる物を環境省令で定める。ただ、全ての輸出先国についての確認は困難なため、(1)日本へのシップバック通報が繰り返し発生するなど国際的な問題に発展する可能性があり、(2)日本よりも輸出先国の規定が厳しく、(3)輸出先国の規定が明確であること―の3条件に合致する場合に省令で定める方針。この方針に従い、具体的には香港に輸出されるモニターなどの電気電子機器を規定し、その他の国については必要性が生じた際に随時検討するとしている。

輸出先の汚染防止措置に関する確認基準方針

 運搬者および処分者が相手国内の法令を適正に順守していることが大前提となる。また、環境汚染の防止を適正に完遂する経理的な基礎を有することを確認。日本で求められる環境保全上の水準を下回らない方法で運搬および処分されることが確実と認められることを基本的な考え方として踏襲する。

 さらに輸出承認の審査に当たり、輸出者が特定有害廃棄物等の輸出に関してシップバックに対応できる資力を保証する書類の提出を求めるが、その必要資力(金額)の具体的な計算式も規定する。

© 株式会社鉄鋼新聞社