【東国製鋼との資本・業務提携】〈東京製鉄・今村清志常務〉製品補完で「十分なメリット」 東国へのホット供給「可能性高い」

東国とJFEの関係「特に意識せず」

 東京製鉄の今村清志常務営業本部長は27日、韓国・東国製鋼との資本・業務提携の経緯や狙いなどについて説明した。

――東国製鋼とのこれまでの関係は。

 「91年に当社が岡山工場でホットコイルの生産を始めたころから当社製品を購入していただくなど取引関係があった。東国は冷延からカラー鋼板まで鋼板の下工程が充実しており、当社のホットコイルは補完機能になったと思う。東国への販売実績は累計で数十万トンレベル。ただ非定期的な取引であり、ここ最近の販売実績はない」

東京製鉄・今村常務

――提携の話が出たのはいつごろか。

 「昨年秋に東国側から資本を含めた提携の申し入れがあった。世界的に循環型社会の構築が意識され、電炉プロセスの位置付けが高まる中、互いに電炉メーカーとして鉄スクラップの高度利用など考え方が共感できた。両社はオーナー系電炉であり、社風も似ている」

――東鉄として提携メリットは。

 「東国には上工程がなく、ホットコイルは生産していない。ホットを当社が供給することで電炉鋼材の普及につながる。鉄筋棒鋼では東国は当社にない太径(最大57ミリ)を生産している一方、当社は東国にないジャンボサイズH形鋼(700×300以上)が生産可能だ。過去には東国にホットだけでなく、ジャンボサイズのH形鋼やスラブを供給した実績がある。両社にはそれぞれ技術的な強みもあり、互いにメリットは十分にある」

――製品や半製品の具体的な取引は。

 「まだ提携が決まったばかり。具体的には何も決まっていない。人的交流や会合予定も白紙の状態だ。可能性のレベルで言えば、最もあり得るのが当社のホットコイルを東国に供給することだろう。スラブ供給も可能性がある。製品を補完する上では東国にJISを取得してもらい、当社がジャンボサイズのH形鋼でKSを取得する可能性はある」

――東国にはJFEスチールが15%出資しているが。

 「当社が特に意識していることはない。東国側も今回の提携はJFEスチールとの関係に影響しないと話していた。当社と東国の約1%の株式持ち合いは業務提携を強固にする狙い。保有比率の引き上げに関しては現時点で話は全くない」

――他の海外メーカーとの交流関係は。

 「東国との提携によって他社との交流に変化はない。工場見学などを通じた交流は従来通り継続する。他メーカーからのスポット的な受託生産もニーズがあれば対応する。資本提携が事業の制約になることはなく、当社として独立独歩の経営を変える考えはない。将来を見据えた中で東国とは互いに事業上の提携メリットを感じたということだ」

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