【新日鉄住金グループ企業の〝今〟(19)】〈日鉄住金神鋼シャーリング〉合理化・付加価値向上で収益改善 2次加工比率向上ワンストップ対応目指す

 建材・産機向けを中心とする厚板シャーの日鉄住金神鋼シャーリング(略称・NSSシャーリング)は2013年4月、旧新日本製鉄および神戸製鋼所系の日鉄神鋼シャーリングと旧住友金属工業系のシーヤリング工場が統合し、発足した。新日鉄住金誕生に伴い、系列会社の再編が検討される中、同社の発足はその再編策における第一弾となった。

 統合検討時は両社ともに採算は赤字。建材厚板需要も、大型プロジェクトが一巡するなど停滞期にあり、少子高齢化に伴う長期的な需要減も避けられない見通しで、建材厚板シャーを取り巻く環境は厳しさを増す情勢にあった。

 こうした情勢を乗り越えるため、NSSシャーリング発足を機に要員合理化および生産体制の集約化に踏み切り、大阪工場のレーザ・プラズマ・ガス溶断機をそれぞれ1基ずつ撤去。堺工場にあるレーザ2基のうち1基を大阪工場に移設した。こうした合理化によって、年間1億円を上回るコストを削減した。

 これらの結果、統合初年度から経常黒字を計上。その後も基幹システム統合などコスト削減策に取り組み、これまで4期連続の経常黒字となった。「今期(18年3月期)も黒字見通し」(浅野社長)であり、5期連続の黒字はほぼ確実になっている。収益改善が進んだことから、老朽化対応にも着手。昨年には数億円を投じて岸壁クレーンを更新している。

 コスト削減策だけではなく、収益力向上を狙いに高付加価値化も進め、2次加工比率を高めた。以前からも2次加工設備はあったが、「曲線に対応できる自動ガス開先ロボット」「印字専用ライン」「ピアシング用ドリルマシン」「プレス矯正機」などを増設し、「ワンストップで加工ができる」(同)工場を目指した。浅野社長は「建材・橋梁向け中心の大阪工場、産機向け中心で荷役用岸壁のある堺シーヤリング工場の両工場が相互補完的な役割を果たしている」と話し、統合効果を最大限発揮できるよう取り組みを続けた。

 大手ファブの工場閉鎖などに伴う需要減によって統合時の月産量約4千トンから足元は3千トンにまで減ってはいるものの、「筋肉質な体制を構築した」(同)ことで、加工量の増減に依存することなく、利益を確保できるようになった。

 今後の展望について、浅野社長は「熱処理事業も含め各部門で当社の強みを生かしていく。まずは営業提案力を高めたい」とし、さらに「我々にしかできないこと。つまり『オンリーワン・ナンバーワン商品』の開発なども進める。数量だけを求めるのではなく、付加価値を高める。当社の価値を認めていただけるような仕事を増やし、収益力のある厚板シャーとして存在感を高めたい」 (このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

企業概要

 ▽本社=大阪市此花区常吉

 ▽資本金=2億3114万円(新日鉄住金の出資比率50・1%)

 ▽社長=浅野博之

 ▽売上高=50億円(18年3月期見通し)

 ▽主力事業=建材・産機向け厚板の溶断加工および厚板の熱処理

 ▽従業員=約120人

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