生活支援ロボット公開 トヨタと相模原市内の企業が共同開発

 トヨタ自動車が開発し、介護・福祉分野などへの普及を目指し相模原市内の企業と共同研究を続けている生活支援ロボット(HSR)の実証実験がこのほど関係者に公開された。ロボットに全てを任せるのではなく、人間と作業を分け合うのがコンセプト。特別養護老人ホームでコミュニケーションを取りながら、介護スタッフをサポートする狙いで、今回はオートロックの解錠をする動きを関係者約20人が見守った。

 「こんにちは、お帰りですか?」「退出カードを見せてね」「もう1回やってみるね」 男の子の気さくな声が響く。カードキーを利用者から受け取った小型ロボットが壁のセンサーにタッチしてドアを開けるまでの動作。自分の動きを説明しながら任された仕事をこなし、センサーの加減でうまくいかないと、その状態をまた説明してくれる。

 実証実験は23日、同市中央区田名の特別養護老人ホーム「縁JOY(エンジョイ)」で行われた。ケアが必要なお年寄り100人(入所90人、ショートステイ10人)が入居、デイサービスに30人が通う。このうちデイサービスの利用者が帰る際の確認・見送りを任された。施設内の廊下に設置されているオートロック付きのドアの前に立ち、通常はスタッフが付き添い解錠する作業を肩代わりする想定だ。スタッフの負担を減らし、本来の仕事に専念してもらう目的がある。

 HSRは「Human Support Robot」の略。ロボットの重さは37キロと軽量で全長135センチ。長さ60センチの腕があり、1・2キロの重量を持つことができる。「手」の部分には持ったり吸着したりできる機能がある。目に当たるカメラは5台装備されている。

 市内企業による「さがみはらHSR社会実装研究会」(事務局・さがみはら産業創造センター)が昨年12月から構想を練り、専用アプリケーションを作った上でことし1月から検証を続けてきた。

 同研究会は「さがみはらIT協同組合(杉本祥一理事長)」を中心に、玉川大学学術研究所先端知能・ロボット研究センター主任岡田浩之教授の協力でプログラムを開発した。岡田教授は介護施設で実施してきたアンケート結果を踏まえ、「床に落ちたペットボトルを拾うことが困難だという事例が多い。だが忙しく働く職員には頼みにくい」とした実情を紹介。「単純な作業はロボットが担い、人間と協働するのが理想だ」と期待する。施設を運営する社会福祉法人相模福祉村の赤間源太郎理事長は「人手不足が慢性化する中、作業の見直しや発想の転換、遊び心を取り入れた活用法を検討したい」と話した。

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