日産に団交命令 派遣雇い止めで県労委

 派遣社員の雇い止めを巡り労働組合との団体交渉を拒否したことは不当労働行為に当たるとして、県労働委員会は27日、日産自動車(横浜市)に対し団交に応じるよう救済命令を出した。派遣先企業を「使用者」と全面的に認め、団交に応じる義務を明確にしたケースは初めて。

 命令書などによると、日産はリーマン・ショックに伴う業績悪化を理由に2009年3月、派遣社員の契約を打ち切った。派遣元から雇い止めになるなどした男女2人が所属する日本金属製造情報通信労組神奈川地方本部が15年に団交を要求したが、日産は「直接の雇用関係にない」として拒否。労組側は16年1月に救済を申し立てた。

 県労委は、2人が日産への派遣を前提として派遣元に採用されていたと判断した上で、雇用に関する決定について「日産は事実上派遣元と同程度に支配・決定していた」として、労働組合法の使用者に当たると認定。また「労使紛争を自主的に解決すべき当事者性もある」と指摘し、団交に誠実に応じるよう命じた。

 日産の雇い止めを巡っては、派遣社員ら5人が損害賠償や雇用継続を求めて09年に横浜地裁に提訴、16年までに全員の敗訴が確定している。同労組側は日産車体(平塚市)に対する救済も申し立てたが、棄却された。

 命令を受け、横浜市内で会見した元派遣社員らは「主張が認められ、画期的」「会社に戻る希望が持てる結論に感謝したい」などと歓迎。日産自動車は「命令を精査した上で対応を検討する」とコメントした。

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