金属行人(3月2日付)

 慶應義塾大学三田キャンパスの図書館旧館改修工事が進められている。耐震補強と内外装の老朽化に対応する工事で2019年竣工予定だ。ここに新日鉄住金エンジニアリングの最先端免震装置である球面すべり支承「NS―SSB」が採用されることは昨年、紙面でも紹介させていただいた▼施設は高い防災意識を背景に建設されたようだ。「慶應義塾図書館史」によると図書館の建設時にはコストの関係から木造にとの意見も出たようだが、時の鎌田栄吉塾長が「木で以て図書館を建てるなどということは間違っている。図書館というものは不燃物で建てなければならない」と主張し、書庫全体が鉄筋コンクリート造りとなったという▼慶應義塾の機関誌「三田評論」18年2月号には本工事についての寄稿がある。そこには旧図書館について重い書籍を置くため床は相当頑丈で、当時は珍しかったエキスパンドメタルを海外から取り寄せて使用したということが書かれていた▼その後、大地震や戦争を経たが現在まで100年以上にわたり人類の叡智である書籍を守り続けてきた。今回の工事では現在の先進技術が適用され、新たな歴史を刻んでいくことになる。建物自体がまさに知の殿堂の象徴と言えそうだ。

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