“Road to 2020” U-23アジア選手権2018準優勝のベトナムが東京五輪に照準

遂に開幕した2018年のJ1。開幕節で激突した広島と札幌の一戦は、ともにタイ代表選手が所属することからタイダービーとして注目された。試合は新加入ティーラシンの決勝弾で広島が勝利。そして東南アジアでタイと鎬を削るベトナム。1月のAFC U-23選手権では準優勝を達成。躍進する東南アジア、彼らは五輪、W杯を見据えている。

躍進する東南アジア、若きベトナム代表は東京五輪を目指す

出典: https://laodong.vn/giao-duc/gs-truong-nguyen-thanh-tu-u23-viet-nam-va-bai-hoc-cho-phat-trien-khoa-hoc-giao-duc-588866.ldo

今年1月に中国で開催されたAFC U-23選手権2018で、東南アジアのダークホースであるベトナム代表が史上初となる準優勝の快挙を達成した。韓国人のパク・ハンソ監督率いるベトナムは、今大会のグループリーグD組で強豪オーストラリアを破って初白星を挙げると、1勝1敗1分で同組2位通過。決勝トーナメントでは、中東のイラクとカタールを延長・PK戦の末に下して決勝にコマを進めた。

勝てば、初のアジアタイトルとなる決勝戦では、大雪の中でウズベキスタンと120分の死闘を繰り広げ、1-1で迎えた延長後半の終了間際に勝ち越し弾を許して、ベトナムは惜しくも準優勝に終わった。敗れはしたが、決勝トーナメントで日本に4-0、韓国に4-1で大勝して、今大会圧倒的な攻撃力を見せつけたウズベキスタン相手に大健闘と言える試合内容だった。

ベトナム国内は、アジアの舞台で大躍進を遂げた若き代表チームの話題で今も持ちきりだ。気の早い話だが、この調子で、東京五輪予選を兼ねる2020年のAFC U-23選手権でも好成績を残し、今度は世界の舞台でベトナムサッカーの力を示そうと意気込んでいる。今回は、2年後の東京五輪を目指す世代を中心に、ベトナムの若きタレントを紹介する。

J2徳島が獲得に動いた“若き王様”グエン・クアン・ハイ(Nguyễn Quang Hải)

出典: https://thethao.thanhnien.vn/bong-da-viet-nam/u20-viet-nam-u20-phap-cho-man-toa-sang-cua-quang-hai-75018.html

今大会でチーム最多5ゴールを挙げて、大ブレイクしたMFグエン・クアン・ハイは、ベトナムで最も将来を嘱望されている若手の一人だ。天才レフティーとして、その才能は以前から注目されており、これまでアンダー世代の代表では、常にチーム最年少で飛び級招集されていた。一昨年には、U-20代表のエースとして、FIFA U-20ワールドカップに初出場を果たしている。

所属するハノイFCは、ベトナム1部Vリーグで毎年優勝争いに絡んでくる強豪だが、ここでもレギュラーのポジションを掴んでおり、過去2シーズンでゴールとアシストを量産。左足から繰り出されるシュートは高い精度を誇り、チームにとってセットプレーは重要な攻撃のオプションとなっている。今オフには、タイ1部クラブやJ2徳島ヴォルティスが獲得に動いたとされ、近い将来の海外移籍が確実視されている。

甘いマスクで女性人気No.1“守護神” ブイ・ティエン・ズン(Bùi Tiến Dũng)

出典: http://vietnamnet.vn/vn/the-thao/bong-da-trong-nuoc/bui-tien-dung-kho-vi-du-luan-u23-viet-nam-can-duoc-buong-tha-432946.html

攻撃の主役がグエン・クアン・ハイなら、守備の主役は間違いなく、正GKのブイ・ティエン・ズンだ。今大会では、PK戦までもつれた準々決勝と準決勝で、抜群の反射神経でファインセーブを連発し、決勝進出の立役者となった。端正なマスクの持ち主でもあり、女性人気が非常に高く、有名女優やモデル、歌手からラブコールが届くほど。弟のMFブイ・ティエン・ズン(Bùi Tiến Dụng、SHBダナン)もU-23代表のメンバー。

所属するFLCタインホアは、豊富な資金力を持ち、毎年大型補強を行うことで知られ、特にGKのポジションは激戦区。昨シーズンは控えGKに甘んじていたが、今大会での活躍で大きく株を挙げており、今シーズンから指揮を執るルーマニア人のマリアン・ミハイル監督からも高い評価を受けている。因みに、スポーツ専門チャンネルFox Sports Asiaが今年初めに行った東南アジアGKの人気投票では、フィリピン代表ニール・エザリッジ(英2部カーディフ・シティ)、タイ代表カウィン・タンマサッチャーナ(ベルギー2部OHルーヴェン)に次ぐ3位に選ばれた。

欧州も注目する大型左サイドバック ドアン・バン・ハウ(Đoàn Văn Hậu)

出典: https://baomoi.com/doan-van-hau-la-cau-thu-tre-xuat-sac-nhat-dong-nam-a/c/23291849.epi

185cmの長身、90分間アップダウンを繰り返す走力を持ち、フィジカル重視の近代サッカーに求められるサイドバックの条件を満たしたドアン・バン・ハウには、既にオランダやドイツなどの複数クラブが獲得に関心を示している。今年19歳を迎えるという若さだが、所属するハノイFCでも、ベトナムA代表でも不動の左サイドバックとして定着しつつある。特に攻撃のセンスは際立っており、U-20ワールドカップ予選を兼ねたAFC U-19選手権では、数々の印象的なゴールを決めた。

3バックを好むベトナム代表パク・ハンソ監督のもとでは、左のセンターバックで起用されることが多くなったが、適正はやはり走力と攻撃力が活かせるサイドバックであろう。国内メディアからは“ベトナムのマルディーニ”、“ベトナムのラーム”と呼ばれることが多いが、最近、欧州メディアに取り上げられた際は、スピードに着目して、“ベトナムのベイル”と紹介されていた。

“ベトナムのメッシ”はオーバーエイジで出場を目指す? グエン・コン・フオン(Nguyễn Công Phượng)

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ベトナムサッカー界で今、最も客が呼べる選手と言えば、“ベトナムのメッシ”ことグエン・コン・フオンを置いて他にはいない。Facebookのフォロワー数は、ベトナムのサッカー選手で最多の約200万人。一昨年は、ベトナム1部ホアン・アイン・ザライ(HAGL)からJ2ホーリーホックに期限付き移籍を果たした。初の海外挑戦となった水戸では出場機会に恵まれず、不完全燃焼に終わったが、昨年以降、かなりフィジカルが強化された印象で、頼もしさを増している。

2年後の2020年には25歳になるグエン・コン・フオン。東京五輪に出場するとすれば、オーバーエイジ枠での出場になるが、五輪出場はサッカー人生をかけた挑戦になるとして、本人はやる気満々だ。とはいえ、まずは予選突破が先決。来たるべき日に備えて、国内リーグで日々鍛錬を重ね、名実ともにベトナムのエースになる必要がある。当面の目標は、低迷するHAGLをリーグ王者に導くことだろう。

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