広がれワークルール教育 「ブラック企業」に対抗 今国会に法案提出へ 超党派議連

 違法な長時間労働を強いるなどブラック企業やパワーハラスメント(パワハラ)が社会問題となる中、労働法の基礎的知識や働き手の権利を伝える「ワークルール教育」を推進する法律の制定に向けた動きが進んでいる。与野党を超えた議員連盟が、国の責務などを定めた法案を策定。県内の国会議員や弁護士も参加した市民集会で、3月中に国会提出を目指すことを確認した。

 「ブラック企業がはびこってしまうのは、働く側も雇う側もルールを知らなすぎるからだ」 2月27日夜に国会内で超党派の議員が開いた市民集会。大学生や教員、経営者団体の関係者らから、法案成立への期待が語られた。

 法案は非正規雇用対策議連(会長・尾辻秀久元厚生労働相=自民党)が昨年11月に策定。労働法や社会保障制度とそれらの活用方法を「ワークルール」と定義し、学校、職場、地域での教育や啓発を推進させる内容だ。本来は雇用者側に守らせるものだが、労働者側も自らの権利に対する認知度が十分でない現状から、教育活動で基本的知識を伝えるのが狙い。

 法案策定では、労使双方にとっての必要性に重点を置いたという。労働法規を守らずに利益を上げるブラック企業は働き手の権利を踏みにじるだけでなく、ルールの下で競合している経営者にとっても事業の健全な発展を妨げる存在になりかねないためだ。法案づくりに関わった小島周一弁護士(神奈川県弁護士会)は「働く側も雇う側も、共に幸せになる法律にしたい」と語る。

 一方、集会では実践に当たっての課題も指摘された。研究者らからは「専門的な内容のすべてを学校の先生が教えるのは難しい」「ルールを教えたから、後は自己責任という風潮になることは避けてほしい」といった要望があった。議連メンバーで共産党の畑野君枝氏(衆院比例南関東)は「現場や専門家の声を教材づくりに反映させ、充実したものにしたい」と話す。

 各党内の手続きを経て、法案は3月中の国会提出を予定する。国会では裁量労働制に関する不適切データ問題を巡り、与野党の対決が強まっているが、議連の幹事長を務める社民党の福島瑞穂氏(参院比例)は「立場を超えて必要な法律。早期に成立させたい」と強調。「現状は働く上でのルールをほとんど何も知らないまま、学生が社会に出ている。産休や育児休暇といった基本的な権利から社会保障など、必要な知識を伝えられるようにしたい」と意気込む。

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