診療報酬改定 常に問われる費用対効果 栗原 正紀

 去る2月7日、2018年度診療報酬改定が中央社会保険医療協議会(中医協)総会で答申された。医師らの技術料や人件費に当たる「本体部分」は0・55%引き上げであったが、全体では1・19%のマイナス改定となった。

 診療報酬は、公的医療保険を利用して受けた医療サービスの対価として、病院や薬局などに支払われる公定価格のこと。手術や検査など個別に単価が決まっており、原則2年に1回改定されている。

 全体の改定率は、政府の予算編成で決まる。その狙いは、財政難の下で国民皆保険制度を堅持し、効率的・効果的に質の高い医療サービスが提供されるようにコントロールする意味合いが強い。

 そして個別の単価見直しは、厚労省が医療改革などの方針にのっとって中医協に提案。日本医師会など医療機関側と保険者側の代表らで構成する中医協委員の審議の結果、答申となる。医療機関はこれらの改定を受けて、速やかに対策・体制の整備を行い、運営・経営に反映させることが求められるわけである。

 さて、今回の改定では「地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進」が方針の一つとして掲げられ、新たに「患者の状態に応じた入院医療の新評価体系」が導入されることになった。看護師や他の専門職の人員配置など病棟の体制を基本として、入院患者の状態像(重症度など)やアウトカム(在宅復帰率など)を実績部分として評価、報酬に反映させる仕組みで、「改善」の実績に応じて入院料が異なってくるのである。これは従来の入院医療の在り方を大きく変える構造改革と言える。

 急性期においては、重症度に応じた看護師の人員配置が強く求められている。地域包括ケア病棟では、在宅復帰率の他に、在宅から直接入院あるいは緊急入院した患者の数が評価項目として盛り込まれ、在宅支援の役割を担うことが期待されている。

 回復期リハビリ病棟では、入院時の障害をどのくらい短期間に改善させたかが問われてくる。その他、医療・介護の連携や質の高い在宅医療の推進が求められている。

 これからの医療機関は、地域の病床機能を再編する「地域医療構想」に沿って苦渋の選択を強いられるのみならず、質の高い医療サービスによって短期間に結果を出すよう、常に費用対効果を問われることになる。病院運営は非常に困難な時代になってきたと言え、乗り越えていくためには市民の理解と協力が不可欠である。もはや地域医療は医療従事者のみでは守れない時代になったことを実感する。

 【略歴】くりはら・まさき 1952年佐世保市出身。長崎リハビリテーション病院長。日本リハビリテーション病院・施設協会長。災害リハビリ支援、地域の包括的医療も研究する。脳神経外科医。長崎大医学部卒。

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