【大阪管工機材商業協同組合創立80周年 歴史・現状と今後を聞く】忌憚のない意見交換で発展 専門性を生かし共存、設備総合展で学生にPR

 バルブや継手、ポンプ、化成品など配管設備の販売業者109社で構成する大阪管工機材商業協同組合(理事長・久門龍明久門製作所社長)は、組合創立80周年を迎え今日5日に記念式典と祝賀会を開催する。1928(昭和13)年に大阪バルブコック卸商業組合として創立し、太平洋戦争中は一時解散したものの、戦後間もなくに再結成され、日本の復興や高度成長を支えてきた。同組合の久門理事長と3人の副理事長(多田修三カクダイ副社長、岡崎信一岡崎産業社長、九喜延之九喜ポンプ工業社長)に歴史と現状、今後の展開について聞いた。

――まず創立80周年を迎えての感想は。

 久門「80周年の今年、私はたまたま理事長を務めているだけだが、戦前からの長い歴史と組合事業としての重みと責任を感じている。昭和に始まり、平成、次の元号と歴史を刻んでいるが、90年、100年と飛躍のステップとなるような組合事業を今後も展開していきたい」

――協同組合が80年も続いた秘訣はありますか。

 久門「80年の間には廃業された企業もあり、新たに起業されたところもある。もちろん会員同士はコンペチターなので営業の最前線では『取った、取られた』がある。ただ経営のトップ同士が忌憚のない意見を交わし、各社が自社の生きる道を大切にしながら日々経営に取り組んでいる。狭い業界なので正会員が109社とこじんまりとしているが、この規模感もちょうどいいように思う。また元理事長の3人に理事として残っていただき、大所高所から意見をいただいていることも組合運営がうまくいっている一因だと思う」

――副理事長の皆さんは80年の組合の歴史をどう見ていますか。

 多田「我々の扱う商品は、ガス、上下水道などのインフラや住宅、工場のプラントなど幅広い分野で使われている。そのため様々な部品を集めてくる必要があり、それぞれの問屋が専門性を持つようになった。同業者として競合しながらも、それぞれの専門分野では助け合うこともあるので、長く続いているのだと思う」

 岡崎「地域的な面から言えば、大阪市西区の立売堀、新町界隈には、専門性を持った問屋が早くから数多く集まっていた。そのためつながりが昔から深い」

 多田「豊臣秀吉の時代に大阪の寺町に色々な商工業者が集められ、立売堀にもたくさん商工業者がいたようだ。また明治時代の西区には外国人居留地があり、当時の欧米の先進的な器具が入っていた」

 岡崎「個々の企業ではできないような商品展示会や勉強会、ETC事業を組合として取り組んでいることも大きい」

 多田「各社が堅実経営で、競争の中でも〝そこまでしてはいけない〟という節度を持っている。そういった組合に属していることに誇りを持っている」

――商品展示会ということでは、昨年9月に管工機材設備総合展を開催され大盛況だったが。

 久門「出品者の皆さんのおかげで活気がありながらも、まとまりのある展示会となった。来場者も15年の前回を上回る1万5千人とにぎわった。1年前から準備を進め、特に青年部会の皆さんには実働部隊としてよく働いてもらった」

――その総合展の新たな取り組みの一つとして、大学生のインターシップと展示会を連携させたが、その効果は。

 多田「総合展のインターシップを通じて業界に入社したのは数人のようだが、大学からは好評をいただいている。実際の商品に触れ生産や営業の現場で働く人と直接話ができるということで多くの大学から関心を持ってもらっている。今後も継続し、業界の人材採用に貢献していけるよう発展させていきたい」

 久門「従来の就職セミナーでは人事担当者しか来ないが、営業マンと話すことで、大学生は自分の将来像をはっきりと想像できる。また商品説明を聞くことで、会社の内容がより具体的に見えてくる。管材は建物や地面の中に入ることが多く目立たない商品だが、業績の安定している優良企業はたくさんある。若い人が入社してくれないと、深いノウハウを後世に伝承できないので、組合として業界の知名度アップに取り組んでいきたい」

共同ETCカードでの割引還元など公益性追求

――先ほどの話の中にあった青年部会の活動状況は。

 久門「組合の事業を引き継いでもらえるような次世代の人材を育成しようと12年前に設立した。現在、会員は30人で、本部が稼働資金を援助し海外研修などの学びの場を提供している」

――組合としての主な事業は。

 久門「まず先ほどから話に出ている2年に1度の総合展のほか、人材育成のための各種勉強会を開催している。また共同のETCカード制度や自動車共済などの保険代行、退職金の積み立ても行っている」「また災害発生時に継手やバルブなどインフラ復旧に必要な資材を被災地に優先的に供給する協定を、大阪市管工設備協同組合や上部団体の全国管工機材商業連合会と結んでいる」

――共同のETCカード制度とは。

 久門「ETCの大口・多頻度割引制度のコーポレートカードに協同組合で入り、高速道路料金の割引額を組合員に還元している。16年9月からこの制度を導入し、17年度は2億6千万円の高速道路利用額のうち1600~1700万円を還元できる見込みだ」

――共同のETCカードを導入することになった経緯は。

 多田「物流対策として、以前から会員同士で共同配送できないかと検討を重ねてきたが、利害の調整が取れず、実現するのは難しいとの結論になった。それならばメリットの出せるETCカードを組合で持とうということになった。会員の事業規模の格差が大きく上場企業がある一方で家族経営の会社もある。こういった小さい会社が取り残されないようにしていきたい」

――80周年の式典はどういったものになりますか。

 多田「式典には420人が出席し、永年勤続表彰や若い世代の育成、活動状況を報告する。その後の祝賀会では、戦後間もなくの焼け野原から復旧した様子などの歴史を映像で振り返る。オープンニングとラストにはアトラクションも用意している」

 久門「総合設備展同様、多くの方々のご協力のお陰で式典を開催できることになった。皆さんと一緒に喜びを分かち合いたい」

 久門龍明理事長(久門製作所社長)、多田修三副理事長(カクダイ副社長)、岡崎信一副理事長(岡崎産業社長)、九喜延之副理事長(九喜ポンプ工業社長)

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