《音楽日々帖》トラックメイカー たちの音楽

 HIPHOPやEDMなどの音楽がメインストリームで聴かれるようになって以来、トラックメイカーの存在感が増しています。トラックメイカーとは、材料となる音を集め、一つのトラックに “料理” する人のことで、プロデューサーと呼ばれることも。今月はセンス光るトラックメイカーたちの音楽をご紹介します。

 DJミツ・ザ・ビーツが、電気ピアノ(エレクトリックピアノ)のフェンダーローズをフィーチャーしたアルバムを出しています。ビリー・ジョエル「Just The Way YouAre」やスティーヴィー・ワンダー「You’re The Sunshine Of My Life」のイントロで聴こえてくる、あのピアノです。HIPHOP系のビートの上に、70年代の甘いムードをまとったピアノの音が浮遊し、キャンドルを灯すような温かみのあるトラック集です。

 ジェイミー・アイザックは、夜の暗闇に似合うポスト・エレクトロニカ。トラックメイカーであると同時にシンガーであるという点で、ジェイムス・ブレイクを連想せずにはいられません。「Can U See」ではエスペランサ・スポルディングをサンプリング。チルなビートにミニマルなジャズをのせ、大人びたサウンドをつくり上げています。

 最後の1枚は、イェジ『EP2』。反復の多いハウス/トランス系のトラック、英語と韓国語が入り混じるリリックに、けだるカワイイ歌い方は中毒的。ドレイク「Passionfruit」のカバーにもセンスが光ります。

 いまや、スマホひとつあれば誰でもトラックメイカーになることができ、世界に発信できる時代。数ある楽曲の中から、自分のお気に入りのトラックを発掘するのも楽しいですよ。

DJ MITSU THE BEATS『Beat Installments Vol.3』

 仙台在住、HIPHOPグループ・GAGLEのトラックメイカー/サイドMC。2012年から始動したビート・プロジェクトの3作目。フェンダーローズをフィーチャーした1枚

JAMIE ISSAC『Couch Baby』

 ロンドン出身のシンガー/プロデューサーのデビューアルバム。キング・クルエルとして知られるアーチー・マーシャルとは名門ブリットスクールの同級生で、アルバムに客演したことも

YAEJI『EP2』

 韓国出身NY在住のマルチアーティスト。2017年に1枚目の『EP』と本作をデジタル音源のみでリリースすると注目を浴び、BBC期待の新人リスト〈Sound Of 2018〉に選出される

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