諫干 和解協議決裂 開門派「司法が忖度」 反対派「真摯に検討を」

 かつて開門判決を出した福岡高裁が開門せず和解する道を選び、開門派に衝撃が走った。国営諫早湾干拓事業の開門調査を巡る5日の和解勧告は、全面的に国の主張に沿った内容に。「司法が行政に忖度(そんたく)した」。馬奈木昭雄弁護団長は即座に席を立ち、徹底抗戦の構えを見せた。一方、開門反対派は「(和解協議入りを)真摯(しんし)に検討して」と開門派に促した。

 「では、この場で拒否する」。開門について議論しないと裁判官に告げられ、馬奈木団長はこう突っぱねた。終了後の会見では「判断ミスをしているのは裁判所だ」と怒り心頭。長崎地裁の和解協議でご破算になった内容が踏襲されたことに「地裁での議論が生かされていない」と語気を強めた。

 有明漁協の松本正明組合長は取材に「長崎地裁で物別れしているのに(内容が)前進していない」と批判。諫早市民有志らでつくる「諫早湾干拓問題の話し合いの場を求める会」の横林和徳事務局長は「もっとお互いの意見を見詰め、しっかり議論していくような勧告であってしかるべきだ」と苦言を呈した。

 一方、漁業振興基金案での和解を目指す農林水産省農地資源課も会見。高橋広道室長は「(協議継続の)可能性はゼロではない。ラストチャンスのつもりで、関係者に理解を得られるよう努力する」と話した。

 開門反対派は高裁判断を評価するコメントを出した。弁護団は、地裁と同じ内容の勧告を示したことに「裁判所が一貫して非開門の考え方を採っている」。中村法道知事は「裁判所から改めて『開門してはならない』という方針が示された。真の有明海再生につながる具体的な成果が得られるよう期待する」とした。

 干拓地営農者の町田浩徳さん(55)は取材に「開門派に和解勧告を受け入れてもらい、国主体で長年の問題を円満に解決してほしい」と求めた。

福岡高裁が「開門せず基金で解決」を促した協議の後、記者会見する開門派弁護団=同高裁

© 株式会社長崎新聞社