鎌倉彫教室、先生は93歳 地域で指導50年超え 横浜市泉区

宗峰会・フォンテ会のメンバーたち

 シュッ、シュッ、シュッ―。静かな教室で木を削る音だけがリズミカルに響く。鎌倉彫宗峰会・フォンテ会の作業日だ。ここでは三谷宗豐彩さんと石井宗芳さんの2人が講師を務め、6人の生徒たちが学んでいる。

 壁掛け、鏡、短冊掛けなど生徒たちは思い思いの作品づくりに励む。1回およそ3時間。黙々と手を進める”優等生”ばかりだが、そこに緊張感はなく、自由におやつ休憩を挟みながらそれぞれが自分のペースで楽しんでいる。

 「自分で使いたい」「記念の贈り物に」など制作動機は様々だが、比べるのではなく、認め合うのが良いところ。講師陣も歩き回って細かい指導をするのではなく、要所、要所で声をかけている。

「死ぬまで勉強ですよ」

 宗峰会の会長で、生徒たちから大先生と呼ばれている三谷宗豐彩さんは御年93歳。区内の地区センターなど地域で50年以上に渡り指導を続ける大ベテランだ。もとは鎌倉に住んでいた時に市民向け講座に誘われたのがきっかけだったが、すぐにのめりこんだ。彫りだけでなく、図案、塗り、歴史など、終わりの見えない奥深さがまた、自身の意欲を掻き立てた。「この年になって初めて気づくこともある。毎日、いや、死ぬまで勉強ですね」と。鎌倉彫を通してこれまでたくさんの人に出会ってきた。極めれば極めるほどに広がる世界もまた、自身の喜びだ。

 作業中は疲れ知らずだといい、今も毎日、半日程度は木と向き合う。迷った時に必ず思い出すのは、師が、さらにその師から言われたという「ノミに聞け」という言葉。答えはいつも、自分の心の中にあると理解している。

指導する三谷さん(左)

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