「救済へ」旧優生保護法巡り議連発足

 旧優生保護法下で障害者らへの不妊手術が繰り返された問題で、救済の在り方を検討する超党派の議員連盟が6日、設立された。手術を受けさせられた当事者へのヒアリングや実態調査を行い、具体的な支援の仕組みを検討することを確認した。会長には自民党の尾辻秀久・元厚生労働相が就任。1996年に差別的条項を削除した母体保護法に改定されてから20年以上を経て、救済に向けた国会議員レベルでの取り組みが本格化する。

 顧問には自民党の河村建夫衆院予算委員長と塩崎恭久前厚労相が就き、呼び掛け人には各党から20人超が名を連ねた。6日の設立総会で、河村氏は「今の時代に許されて良いのか」と対応の必要性を訴え、塩崎氏は「何ができるか考えていきたい」と述べた。他に立憲民主、希望、社民など幅広く参加している。設立総会終了後、呼び掛け人の一人である社民党の福島瑞穂氏は、ハンセン病や薬害肝炎を念頭に「超党派の議員連盟で法案をつくって、全会一致で成立させるのが一番いい」と明言した。

 政治判断で救済方針が決まり、補償や給付金の仕組みを議員立法で定めたハンセン病や薬害肝炎問題が参考例となるとの見方が出ているが、現存する個人名記載の資料が少ないこともあり、被害認定の問題が大きな壁となる可能性がある。また本人同意の有無によらない一律救済をどう実現するか注目される。

 「不良な子孫の出生防止」を目的とした旧法の問題を巡っては、超党派議連とは別に、与党の自民、公明両党がプロジェクトチーム(PT)を設置する方針。公明党の井上義久幹事長は2日の記者会見で「明白な人権侵害があった。救済の道を探ることは政治の課題」と述べ、補償などに関する立法措置に前向きな姿勢を示している。

 日弁連や国によると、旧法下で不妊手術を受けた障害者らは約2万5千人で、うち約1万6500人は強制とされる。宮城県の60代女性が起こした国家賠償請求訴訟は28日に仙台地裁で第1回口頭弁論が開かれるが、公明党の井上幹事長は、救済に向けて「提訴が障害になるとは思っていない」としている。

 旧優生保護法下で障害者らが本人の同意なく強いられた不妊手術が県内で420件確認されたことが、厚生労働省のまとめで分かった。同省が6日の超党派議連設立総会で都道府県別の数を示した。

 同省によると、1949(昭和24)年以降で「遺伝性」とされた精神疾患などを対象とした手術が152件、「非遺伝性」とされた精神疾患などを対象として保護者が同意した手術が268件実施されたことが確認されたという。最後は83年に1件実施されていた。

 議連事務局長に就任した社民党の福島瑞穂氏(参院比例)は「相模原市のやまゆり園事件で、残念ながら私たちの社会にはまだ優生思想があることが示された。強制不妊手術の実態を調査し、救済の仕組みを考えることで、優生思想を乗り越えないといけない」と強調。県内では他に公明党の佐々木さやか氏(参院神奈川選挙区)、立憲民主党の阿部知子氏(衆院12区)が常任幹事に就いた。

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