師弟対決

 青は藍より出でて藍より青し。みんな、立派になりなさいよ。卒業の季節、そんな思いを込めて教え子たちを送り出す先生方も多かろう。荀子(じゅんし)の「出藍の(しゅつらん)誉れ」は、師を超える優れた弟子をたたえていう言葉だ▲驚異的な快進撃で社会現象を巻き起こした弟子は、師匠の生活も一変させた。「人と会う機会が2、3倍になりました」と話すのは将棋の中学生棋士、藤井聡太六段の師匠、杉本昌隆七段。師弟はあす公式戦で初対戦する▲二人の出会いは8年前、藤井クンはまだ小学1年生だった。最初の“対局”は上手が飛車・角と両端の香車を外して指す四枚落ちのハンデ戦だったそうだ。結果は師匠の勝ち▲7歳にしてプロを目指し、直接の指導を受けるのだから才能のきらめきは確かだったのだろう。それにしても、ここまでの急成長は想像できていたか▲藤井六段は先日、ファンが見守る公開対局で、国民栄誉賞を受けたばかりの羽生善治竜王をものの見事に負かしてみせた。場の空気を読み、相手に花を持たせて指し手を緩める人情相撲や「忖度(そんたく)」は将棋盤とは無縁。師匠相手にも全力で臨むはずだ▲杉本七段も現役の勝負師。愛弟子の活躍に目を細めてはいても、やすやすと道を譲ることなどあるまい。師匠の意地か、弟子の恩返しか。好局を期待したい。(智)

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