【丸一鋼管70年の軌跡と展望を聞く】〈鈴木博之会長兼CEO・吉村貴典社長兼COO〉鋼管の品質向上、輸出拡大で発展

 溶接鋼管最大手の丸一鋼管(本社・大阪市)が会社設立70周年を迎え、きょう7日、大阪市内のホテルで記念式典を開催する。1947(昭和22)年12月に大阪で「丸一鋼管製作所」として株式会社を設立。現在は国内で主要9社・海外主要13社のグループで、連結売上高1500億円(2018年3月期予想1534億円)、売上高経常利益率19%(17年3月期)と国内鉄鋼メーカーでトップクラスの収益性を誇る溶接鋼管最大手に発展した。70年の軌跡と100年企業に向けての展望を鈴木博之会長兼CEOと吉村貴典社長兼COOに聞いた。

70年の軌跡

――70年を振り返っての感想を。

 鈴木「まずは、70年間にわたって当社および当社グループの発展に寄与してくださったお取引先の各社様、株主の皆様、地域の皆様、従業員など、たくさんの人たちのおかげで今日があることに感謝します。ありがとうございます。今後、100周年あるいはその先に向けて、さらに成長する丸一鋼管を創っていくという責任を改めて感じています」

 吉村「私も同様です。厳しい時代を乗り越えてきた先輩の皆さん、現在働いている社員の皆さん、当社製品の生産・販売を支えてきてくださった全ての方に心から感謝申し上げます」

 鈴木「当社の主力製品である鋼管は、建築、四輪・二輪などの車、建機・産機、電気・ガス・水道などの生活インフラ、農業関連など幅広い用途があるが、日本経済や時代の変化とともに用途が拡大し、それに積極的に対応してきた結果といえる。当社の歴史を振り返ると、当初は自転車のハンドル製造から始まり、後に鋼管メーカーとしてスタート、1947年(昭和22年)12月に株式会社を設立した。その後、設立記念日を毎年3月1日としている。戦後の当初は、現在のような電縫溶接鋼管は少なく、当社もガス溶接による鋼管を造っていた。58年(昭和33年)に大阪工場(現大阪倉庫=大阪市平野区)に電縫管ミルを導入し、電縫溶接鋼管メーカーになった。その後、高周波溶接造管機など自動化・量産化の技術・設備が広がり、鋼管の品質もさらに向上し、幅広い分野に使われるようになっていった。当時、高炉メーカーの鋼管はガスや水道など配管用鋼管が中心で、当社は橘工場(現四国丸一鋼管)での電線管や、大阪工場で構造用鋼管(STK)の生産販売に力を入れた」

需要地立地が基本

 鈴木「この構造用鋼管が経済発展とともに伸びて、東京工場、堺工場、名古屋工場、詫間工場、北海道丸一鋼管、四国丸一鋼管、九州丸一鋼管、鹿島と堺の特品工場など『需要地立地』で生産体制を確保していった」

 鈴木「ただ、順調に伸びていったわけでなく、65年(昭和40年)に開設した堺工場は、当時の実力以上の大きな工場で、しかも国内経済が不況期だったこともあり、米国向けなど輸出に活路を求めた。当社はすでに米国輸出を行っており、米国のシアーズ・ローバック社から『フェンス用パイプ指定メーカー』の認証を取得し、何度も表彰される実績を持っていた。また日本の鉄鋼全体も輸出を拡大しており、外貨獲得のための国策だったといえる」

 吉村「電縫管方式の溶接鋼管が国内の溶接鋼管メーカーの主流になっていった際、当社も乗り遅れず進めたことや、需要地立地で各地に工場を新設していったこと、さらに83年(昭和58年)には堺工場に20インチ造管ミルを稼働させて、鋼管の大径化を図っていったことなど、時代とともに前進したことが当社の発展に寄与した」

海外展開で「成長戦略」

――国内を拡充する一方、海外展開を積極的に進めてきた。

 鈴木「日商岩井との合弁によるインドネシアのISTW、米ロサンゼルスのMAC(建材用鋼管)に続き、2006年度からの第1次中期経営計画で『成長戦略』をテーマに、(1)国内事業の強化(2)海外展開の拡充―を柱にした施策に力を入れ、以降、09年度からの2次中計、12年度からの3次中計、さらに15年度から今3月までの4次中計と『成長戦略』を展開してきた」

 鈴木「05年に中国・MMP(自動車用鋼管)、06年にベトナム・SUNSCO(建材用鋼管およびガルバリウム鋼板)、08年には米シカゴのLeavitt(建材・エネルギー用鋼管)と、ベトナム・SUNSCOハノイ(自動車用鋼管)、09年にはインド・KUMA(自動車用ステンレス鋼管)と続き、10年にはベトナムでJFEスチール、豊田通商と共同でJ・スパイラルを設立した。さらに12年にはメキシコで自動車用鋼管のMMX、14年にメキシコMMXの自動車用鋼管を加工するAlphamexを近接地に立ち上げ、15年には米オレゴン州(ポートランド)で建材用鋼管メーカーを買収してMOST社とした。その間、米国、中国、ベトナム、インドなどの各工場では市場のニーズ対応および新市場創造に向けて設備の増強や新鋭化をほぼ毎年のように実施してきた。来年19年にはフィリピンで豊通と合弁で二輪・四輪車用鋼管工場MPSTの稼働を決めている」

 鈴木「海外工場も『需要地立地』を基本にしており、それぞれ建材向け、自動車向け、エネルギー向けなど、その地の主要な需要に対応した工場にしている。現在、連結業績に占める海外事業の売上高比率は約38%。当面40%以上が目標だ。海外事業の多くはすでに収穫期でもあるが、同時に、需要に合わせてさらに能力増強を図り、より強い工場にしていくべく、投資を継続している」

「100年企業」に向けて

 吉村「国内では市場が飽和傾向にある中で、引き続き生産・物流の効率化を追求する。一方で、世界に目を向けると鋼材需要の伸びが期待でき、海外では需要地のニーズを的確に汲み取った経営や新たな進出などにより収益性の向上に繋げることで、成長戦略を展開していく」

「世界レベルで強い鋼管メーカー目指す」

――今年4月から第5次中期経営計画をスタートさせる。

 鈴木「『世界レベルで強い鋼管メーカー』を目指しており、これまでの4次にわたる中計の成果や反省を踏まえて、次期中計へと進む。国内ではこれまでの強みを確固たるものにし、海外事業はさらなる強化が必要だ。また、未来に生き残る持続可能な企業であり続けるために、激しく変化する時代の中で柔軟性を持ち合わせることが必要。最先端技術やアイデアを活用し、自社に見合った形で生産性向上に取り組んでいかないといけない。同時に、社会貢献を通じた企業価値の向上は必須であり、身近なところから、社会課題解決に向けた取り組みを考えたい」

 鈴木「成長戦略を展開していくためには、国内外問わず多方面で活躍できる人材の確保・育成も重要な課題。グローバルな企業を支えるのは、より多様な発想とそれを受け入れる風土であり、社員の意識改革も必要。また、昨今働き方改革が声高に叫ばれているが、製造現場の作業環境などにも着目し、本当の意味での改革を実現していきたい。従業員が幸せな働き方のできる企業を目指すことは、結果的に生産性が上がり、当社の持続的な成長にも繋がる」

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