5月5日に戦後初公開 福沢神社 田中丘隅の旗、京都へ 立命館大「災害文化遺産展」に 南足柄市・大井町・松田町・山北町・開成町

麻を藍で染めた「のぼり旗」を持つ山口冨美男さん(左)と大脇良夫さん(右)石碑は文命東堤碑(左)と文命宮(右)=福沢神社

 南足柄市怒田の福沢神社で2009年に発見された麻製の「文命のぼり旗」が、3月16日から5月16日まで京都市北区の立命館大学歴史都市防災研究所で開催される災害文化遺産展に出品される。所蔵する福沢神社(山口冨美男総代代表)が、共催団体の治水神・禹王(うおう)研究会(大脇良夫会長)を通じてのぼり旗を提供する。

 郷土史研究家で禹王研究の第一人者、大脇良夫さん=開成町によると、この旗は江戸時代中期から幕末にかけての古文書に度々登場する。徳川吉宗の命を受けて1727(享保12)年に岩流瀬土手と大口土手(文命堤)を修復した田中丘隅(きゅうぐ)から、千津島村名主の瀬戸家と水下六ケ村(班目村、岡野村、儘下村、千津島村、竹松村、和田河原村)に「文命」と書かれたのぼり旗が計二本下賜され、戦前まで毎年5月5日の例大祭で並び立てる習慣があった。

 2本のうち現存するのはこの1本で千津島の旧家で2009年に発見された。

 田中丘隅による酒匂川治水や禹王信仰の研究が、立命館大学で災害文化遺産を研究する歴史都市防災研究所に注目され、今回の企画展の共催が決まった。

 期間中の5月5日には福沢神社の例大祭があり、この日は京都から里帰りして戦後初めて一般公開される。大脇さんは「旗の組成分析などから時代が特定されれば、文化財としての価値も高まる。揮毫の主も特定したい」と話し、6月にも本格調査を始める考え。

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