なでしこ、アルガルベ杯デンマーク戦を振り返る

アイスランド戦に辛勝したなでしこはデンマークと対戦。その試合を元なでしこジャパンの丸山桂里奈さんに語っていただきます!

なでしこジャパンのシステム変更が鍵

アイスランド戦から、中1日のデンマーク戦のスタメンは、再び、ターンオーバーを採用し大幅に選手を入れ替え、オランダ戦のスタメンに近い布陣を敷く。

GK池田、DF鮫島、熊谷、三宅、有吉、 MF長谷川、阪口、市瀬、中島、FW岩渕、田中。注目は、ボランチに初めて指名された市瀬選手。チームでは、センターバックだが、フィジカルの強いデンマーク戦で、どこまで攻守の切り替え役を発揮できるかが試される。

前半、日本は前線からプレスをかけてボールを奪い、サイドに展開して、攻撃の形を作る。

この形は、なでしこジャパンだけでなく、なでしこリーグでもいろんなチームが試す戦術。

そして、岩渕選手の左足のシュートは、惜しくもポストにはじかれる。ドリブルだけでなく、シュートの精度が高い彼女の思い切りの良いシュートは清々しささえ覚える。シュートが外れても、序盤からシュートで終わることで流れが日本にきたのは間違いない。

岩渕選手から田中選手へのスルーパスはオフサイドの判定。長谷川選手の右足のシュートは左隅に惜しくも外れる。日本は、好機を何回も作るが、得点には至らない。

デンマークは、3-4-3のシステムで、ディフェンスラインを上げて、カウンターを狙い、守備の時は、5バック気味にして、日本の攻撃に対応する。

日本をしっかり分析してきたデンマーク。

日本は、左サイドの長谷川選手、サイドバックの鮫島選手も攻撃参加する。右サイドの中島選手もサイドからクロスをいれる。圧倒的に、ゲームを支配し、再三シュートまで持っていくが、得点につながらない。試合を支配し、ゴール前までいくのにゴールがとれないのはチームにとっても苦しい流れ。

前半は、スコアレスで終了。

後半

後半、日本は、4-4-2のシステムから、4-2-3-1に変更して打開を図る。

横山選手のワントップ、トップ下に長谷川選手、左サイドに右サイドから中島選手が回る。右サイドには岩渕選手。清水選手を右サイドバックに投入する。更に、ボランチには、ユーティリティな宇津木選手を入れて、勝ちにいく。

アイディアの豊富な長谷川選手を中央に起用し、アクセントをつけ、攻撃のバリエーションを増やす狙いもある。

日本は、狙いどおり、中央で、長谷川選手がポジションをとり起点となり、右サイドの岩渕選手、オーバーラップした清水選手と攻撃のリズムを作る。更に、左サイドに増矢選手がはいり、キレのあるターンからドリブル突破をはかる。岩渕選手に続き、増矢選手もドリブルが特亜で勢いがありトリッキーさは彼女にしかない魅力だ。

デンマークは、日本が攻撃に出た際に空く左サイドの裏のスペースをカウンターで狙う。 右サイドから、フリーで抜けて、シュートを打つ。ボールは、右にはずれる。更に、デンマークは、右サイドを突破して、ゴール前で、ヘディングをフリーで打つ。決定的なチャンスを作られたのは大きな反省材料となった。日本はサイドが上がり攻撃に厚みはありつつも、しっかり攻め切ること、中途半端に終わらないこと、やりきらないと流石に空いたスペースを使われてしまい、レベルが高くなればなるほどそこが失点に繋がるので致命的だ。

それでも、勝利への気持ちが強い日本は、波状攻撃をしかける。

右サイドに抜けた、横山選手がシュートを打つ。ゴール前にこぼれて、デンマークの選手がはじいた浮き球を、長谷川選手が、空中でボレーシュートを決めて、先制。

横山選手のゴールへの貪欲さ、そして長谷川選手のゴールへの意識、執念が決め手になったゴールだった。

アディショナルタイム。右サイドから横山選手が、ゴール前の阪口選手にパス、阪口選手が、ヘディングで落として、岩渕選手が、走り込む。 岩渕選手はデンマークのデイフンダーに押し倒されて、PKを奪う。

岩渕選手は身体が小さいので、ペナルティーエリアに進入したら相手DFがなかなか激しく当たれないので、そこをうまく岩渕選手のタイミングで取れたPKだったと思う。彼女の良さ、負けん気の強さが出たプレーだった。

そして、落ち着いて、岩渕選手が左に決め、日本2-0デンマーク。

日本は、勝ち切った意味は大きいが、攻撃の後のカウンターの対応、サイド攻撃からのクロスボールのゴール前でのマークの甘さ等、課題も残った。

それ以上に、日本は後半、4-2-3-1にシステム変更し、厚みを持たせた攻撃の形を作ったのは、大きな収穫となった。イマジネーションあふれる、長谷川選手をトップ下に起用し、豊富な運動量に、適切なポジショニングとシンプルなパスで、バリエーションを増やし、チャンスを演出した。この4-2-3-1の新しい形は、4月のW杯予選に期待を持たせる試みとなった。

勝ちを弾みに

今回のデンマーク戦も、攻守に渡り課題が見えたが、良い部分もそうじゃない部分もこのアルガルベ杯で全て出し、W杯予選に繋げなければならない。

攻撃では良い攻撃が出来てオッケーではなく、しっかり得点という形で結果を残さなければならない。相手のレベルが上がったら何も出来ない、得点を取れないではチームとして厚みがなさすぎる。やはりどんなときも、どんな相手にもしっかりチャンスが来たら決める選手がいないといけない。

守備では、コミュニケーション不足や、GKとDFの連携、DFラインコントロールなど、まだまた不安な部分はあるが、そこをしっかり詰めていけばもっともっと安定したDFになると思うし、やはりDFが安定した国は強い。

まだ、時間はあるのでこれから高倉ジャパンの完成形を作ることができたらいいのではないかなと思います。

そして、サポーターのみなさんの応援が選手には力になるので、ぜひたくさんの応援をよろしくお願いします!

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